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任せるコツ



大きな組織(企業)で部下を抱えて売上目標を達成しなければならないマネージャー、今は小さな組織(企業)であってもこれから部下を増やして大きな組織へ成長させてゆきたマネージャー、いずれもキーとなるのは部下の育成であると言えます。

本書のサブタイトルには「自分も相手もラクになる正しい"丸投げ"」とある通り、著者の山本渉氏はそのための時代にマッチした方法が丸投げであると提唱しています。

"丸投げ"というとネガティブな文脈で使われるケースが殆どですが、あえてこの言葉を使っていることに意味があります。

それは、自らお手本となり部下の面倒を見ながらグイグイと引っ張ってゆくリーダーが優秀であるとされてきた時代が続きましたが、これからの時代にはそぐわない、つまり丸投げして部下に任せるマネジメントが最適だということです。

また"正しい丸投げ"とあるからには、当然"悪い丸投げ"というものも存在します。
それは中途半端な丸投げであり、部下に仕事を任せたと口では言いながら、そのやり方にいちいち細かく口出しをしてしまうことです。

結果としてその部下はやる気が失われ、続いて主体性が失われ、成長が止まり、最終的に指示待ち人間が出来上がってしまうというものです。

かくいうは私にも思い当たる節がありますが、これは「任せ切れない」ことに起因するものです。

部下に仕事を任せられない人には、プレーヤーとして優秀なケースが多いと著者はいいます。

つまりマネージャー本人の方が能力や経験があるため「自分がやった方が早い」、「自分がやった方が完成度が高い」と考えているからであり、その本質には失敗したくないという恐怖心があるのです。

著者はかつて野球の野村監督が「失敗と書いて"成長"と読む」を語ったように、積極的に失敗させることが必要だと説いています。

もちろん組織として許容できない失敗(損害)は避けるべきですが、任せ切る、つまり丸投げをするためにはマネージャー自身の勇気と決断、忍耐が必要なことが分かります。

一応本書は体系的に順序立てて書かれているものの、著者は必ずしも本書のすべてをいきなり実行するのではなく、納得感のあった項目から取り入れてよいとしています。

著者は今もビジネスの最前線で年間100近いプロジェクトを手掛ける統括ディレクターという立場で活躍しています。

それだけに多くの失敗も経験していると自ら公言していますが、学術論や机上論ではなく、こうした現場から学んだ知識・知恵というのは積極的に活用する価値のあるものだと思えます。