レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

「筋肉」よりも「骨」を使え!


本書は武術研究家の甲野善紀氏、そして「骨ストレッチ」をはじめとした整体術、そしてアスリートのトレーナーとして活躍する松村卓氏の対談という形で進んでゆきます。

スポーツ選手がトレーニングを通じて筋肉量を増やしパフォーマンスを向上させるというのは、ほとんど疑う余地のない常識のように思えますが、この2人はそれを根底から否定し、科学的に競技を追求してゆく今の風潮に疑問を呈しています。

たしかに剣豪と言われた昔の武術家たちは筋トレをしてタンパク質を多く摂取するという概念すら無かったはずであり、それにも関わらず超人的なパフォーマンスを発揮できたのは、体を自由に動かすための概念が現代とは違っていたというのが甲野氏の考えです。

またこうした考えに近づくためには、筋肉ではなく骨にアプローチすべきという点で2人の考えは一致しています。

私たちは科学的、医学的なエビデンスがないものをなかなか信用できませんが、2人は多くのケースで現時点で科学的な立証は不可能ではあるものの、結果として大きくパフォーマンスが向上した経験をしてきました。

正直、理論的な説明が難しいために読者には伝わりにくい箇所がいくつか出てきます。

それでも体格的に欧米人などに劣る日本人アスリートが筋肉を中心としたアプローチを続ける限り、それを追い越すことは至難の業であり、潜在的な能力を引き出すための1つの可能性として2人の考えは魅力的に聞こえます。

科学が発展しても人体、もっと大きな視点でいえば生命や宇宙の真理は深まるばかりであり、理論や言語を越えたところにある感覚を大事にする部分はこれからも必要になってくるのではないでしょうか。

正直、ストレッチ方法など本書に書かれている内容を実践するかどうかは別として、1つの流儀として知っておいても損はないと思います。