酔生夢死か、起死回生か。
本書は平成7年から12年(1995~2000年)にかけて行われた計6回にわたる阿川弘之氏と北杜夫氏の対談です。
2人とも昭和30年頃より活躍し始めた作家ですが、昔からお互いのエッセイなどに登場するとても仲の良い2人です。
ただし阿川氏は作家仲間から「瞬間湯わかし器」と呼ばれるほどの短気で知られており、一方で北氏は自ら躁うつ病であること公言しており、基本的にはうつ状態であることが多く大人しい性格です(ただし彼が躁状態になったときは誰も手が付けられないほど活動的になります)。
一見すると正反対の性格の2人が気の合う友人同士であったというのは興味深い点です。
2000年当時の対談では阿川氏が79歳、北氏が72歳と2人ともそれなりの高齢になっています。
実際の対談では誰が見ても年上の阿川氏の方がまだまだ健在といった感じで、年下の北氏の方は「早く死にたい」、「何とかして今年1年のうちに死にたいです」と弱音ばかりをこぼし、年上の阿川氏に励まされているような始末です(ちなみに阿川氏は95歳、北氏は84歳までご存命でした)。
若い頃から長年の付き合いがある2人だけに、対談の当初から最後まで冗談の飛び交う和やかな雰囲気で進んでゆきます。
対談の中で気付くのは、阿川氏は北氏の父親である斎藤茂吉を、北氏は阿川氏の先生である志賀直哉氏をそれぞれ尊敬し合っている点で、この辺りに2人の相性の良さの秘密があるかも知れません。
一方でこの頃すでに2人にとって共通して交流の深かった遠藤周作氏、三浦朱門氏らなど同時代に活躍した作家たちが何人か亡くなっており、その思い出を語り合うシーンなどは読者として楽しみながらも若干の切なさを感じたりします。
お二人の経歴やお互いの交流については、それぞの作品を通じてある程度は知っていましたが、対談を通じて紙面には書かれなかったその舞台裏などにも触れられており、興味深く読むことができました。
もちろん二人のことをよく知らない読者が読んでも楽しめる内容ですが、やはりある程度の作品を知ってから読む方がより楽しみが深まる1冊であることは間違いありません。
2人の老成した作家同士の対談というと堅苦しいイメージがありますが、そのような雰囲気はまったくなく、ユーモアを通じて旧交を温めるといった和やかな雰囲気で終始しているのが読者としては微笑ましく、ページをめくる手が止まらずに一気に読めてしまう1冊です。
登録:
コメント
(
Atom
)
