ダライ・ラマ自伝
中国のチベット侵略により祖国を追われ、インドへ亡命したダライ・ラマ14世が自らの半生を綴った自伝です。
最近では2008年に発生したラサ市内での暴動に代表されるように、1950年に中国がチベットを侵攻(併合)して以来、未だに独立運動が続いている地域であり、ダライ・ラマの存在はチベットにおいて精神的な支柱とされる象徴的な存在です。
チベットと中国の歴史や文化の違いを客観的に判断すると、中国とチベットは全く別の国であると言わざるを得ません。
よって中国がいかに社会主義国家の実現とその伝道を大義名分にしようとも、過去に日本が中国を侵略したのと同様、中国によるチベット人弾圧や、寺院の徹底的な破壊は到底正当化できるものではありません。
本作品はダライ・ラマ14世が、自らの半生を振り返りつつ中国の不当な侵略を訴えている部分もありますが、同様にチベット文化の素晴らしさを世界に向けて発信している側面もあります。
つい最近ダライ・ラマ14世がアメリカを訪問してオバマ大統領と会談しましたが、未だに中国はそれを内政干渉と見なし、ダライ・ラマを中国へ対する分裂主義者と位置付けています。
一方で情けないのは、日本政府はダライ・ラマと未だに政治的な接触を避け続けている点であり、中国政府とチベット亡命政府を天秤にかけ、中国の軍事力の強大さや経済依存度を考慮して、まともな発言や立場表明をしていない有様です。
太平洋戦争において多くの国民の命と引き換えに敗戦を経験して侵略戦争の過ちを知る日本であればこそ、隣人である中国に対しても同じように過ちを指摘する勇気が無ければなりません。