レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

続 聞き出す力


週間漫画ゴラク」に連載されている吉田豪氏のコラム「聞き出す力」の続編です。

プロインタビュアーとして地下アイドルから大御所俳優まで幅広い人たちへインタビューしていることもあり、前作はその面白エピソードばかりが目に付きましたが、本作では前作のスタイルを引き継ぎつつも、より著者のインタビューにおけるスタンスや手法へ言及している印象を受けました。

趣味が一緒で意気投合できる相手へのインタビューであれば何の問題もありませんが、やはりインタビュアーとしての本領が発揮されるのは、自分との相性が悪い相手、性格的に厄介な相手、現場の空気が悪いケースなどではないでしょうか。

吉田氏はそんな悪条件の中でもインタビューを無難にまとめる技術があるのかと思えば、実際は違います。

彼が何よりも最優先にしていることはインタビューそのものを面白くすることであり、そのためには相手の"タブー"と言われている危険領域にも踏み込むスタンスを崩しません。

そこでポイントとなるのは、単純にタブーに触れてNGになるということであれば彼は単なる空気の読めない毒舌インタビュアーで終わってしまいます。
きちんと結果として相手の本音や知られざるエピソードを引き出すことに成功しているからこそ、彼が第一線で活躍し続けているのです。

吉田豪氏にとってインタビューとはプロレスであり、技を繰り出しそれを受けるといった応酬で成り立つものなのです。
つまりインタビューは聞き手と話し手の共同作業であり、息が合わなかったり油断していると時にはケガ(失敗)をしてしまうこともあり得る緊張感のあるものなのです。

本書を読んでいると、メディアで掲載されているスポーツ選手やアーチストなどへのインタビューの大半がいかに退屈でつまらない内容であるかを再認識させられます。

もちろんイメージ戦略やSNSが容易に炎上し、そのたびに"コンプライアンス尊守"が叫ばれる昨今を考えると、マネジメント側が吉田氏のようなスタイルへ目を光らせるという事情も分かりますが、やはり読者(視聴者)としては知らない本音やエピソードを聞ける方が楽しいのは揺るがない事実でもあるのです。

私自身に著者のようなインタビューの機会があるとはちょっと想像できませんが、それでもコミュニケーションのコツとして得るものはあるです。