レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

原田左之助―新選組の快男児

原田左之助―新選組の快男児

タイトル通り新選組の十番隊組長だった原田左之助を主人公とした歴史小説です。

若くして伊予松山藩を脱藩した左之助は、新選組の前身である試衛館時代からのメンバーであり、池田屋事件禁門の変油小路事件鳥羽・伏見の戦い等、新選組を世に知らしめた一連の戦い全てに参加しています。

剣術の腕も一流ですが、新選組内では珍しく槍術の使い手としても知られています。

甲陽鎮撫隊に参加した後に近藤・土方と別れ、永倉新八と共に靖兵隊を結成するものの直後に脱退、そして彰義隊に加入・戦死したと伝えられていますが、その真偽は定かではありません。 また坂本竜馬を暗殺した張本人という説もありますが、確かな証拠はありません。


特に坂本竜馬の暗殺に関しては、左之助は無関係だったという説が有力ですが、本書では、左之助が見廻組の佐々木只三郎に協力を依頼されて竜馬暗殺を引き受けるという、作者による新しい仮説で書かれています。


個人的な原田左之助のイメージは、短気で思慮浅い面があるものの、豪快で恐れ知らずの勇敢さがあり、そして愛嬌のある好青年といった感じで、同時代の人物としては、薩摩藩の桐野利秋の人物像に重なります。

本書で描かれている原田左之助は、立派な武士を目指す情熱あふれる青年である一方、(短気では無く)真面目・冷静さを兼ね備えた、サブタイトル通りの快男児といった人物像として描かれています。

歴史上の人物、とりわけ原田左之助のように若くして死んだ(消息を絶った)人物であれば尚更、本人の考え方や性格といった、経歴や業績以外の部分が後世に伝わりにくいというのは当然のことですが、小説は事実である必要が無い分、こういった足りない部分を補うのには最適な手法だと思います。

歴史小説の完成度としては平均的なレベルの作品ですが、物語のラストも作者の想像力を最大限に取り入れた内容となっており、今までの原田左之助とは違ったイメージを読者に与えてくれる作品です。