中原の虹 (4)
いよいよ「中原の虹」の最終巻です。
"清"や"国民党"の勢力を排除し、ついに張作霖は満州において覇権を確立します。
しかし中国全体で軍閥が割拠する状況は変わらず、小説のタイトルにある通り、誰が中原(中国の中心)の覇権を握るのか全く予想も付かない状況です。
"中原"という言葉は中国の歴史に度々登場する言葉ですが、地理上では黄河中・下流周辺の漢民族の文化(黄河文明)発祥の地域を指しますが、それ以上に「中原を制すものは天下を制す」という歴史的な概念が中国に存在します。
これは他民族間で国家の興亡を繰り広げた中国ならではの概念であり、日本の上京(上洛)といった言葉ともニュアンスやスケールが異なるものです。
元々"清"という国自体が満州民族(女真族)の建国した国家であり、約250年にわたって中国を支配し続けました。
作品の各所に建国の父である太祖ヌルハチ、そして長城を越えて明を滅ぼした3代目の順治帝の時代へと時代を遡って描写されていますが、彼らにとっての"中原"は単なる憧れを超越した、家族や自らの命を引き換えにしても目指すべき"究極の夢"として位置付けられているのが印象的でした。
本作品は張作霖の生涯を描き切ること無く、袁世凱が亡くなる場面で物語を終えています。
個人的には中盤以降、北京を中心にした舞台が続き、満州を舞台としたストーリーの頻度が少なくなってしまったのが残念であり、露骨に言えば、満州を中心にした日本(関東軍)やロシアの暗躍をもっと描いて欲しかったのが本音です。
ただ終わり方を見る限り、未解決の伏線が無数にあり、近い将来、本作品の続編を読むことが出来ると納得することにしました。
本作品で張作霖の役割は終わりつつありので、続編では息子の張学良が活躍することになりそうです。