レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

吐カ喇列島

吐カ喇列島 (光文社新書 365)

吐カ喇(トカラ)列島をこよなく愛する筆者によって書かれた紀行文です。。

トカラ列島は屋久島と奄美大島の間に100キロ以上に渡って連なる7つの有人島と5つの無人島から構成される島々です。

現在でも週に2度のフェリーが交通手段のすべてであり、そのためか決して知名度は高くはありません。

本書で具体的に紹介されている島は以下の通りです。

  • 口之島
  • 中之島
  • 臥竜島
  • 平島
  • 諏訪之瀬島
  • 悪石島
  • 子宝島
  • 宝島

これらの島々はまとめて"十島村(としまむら)"と呼ばれる鹿児島県内の1つの行政区域であり、日本一長い村であるものの、人口は700人に満たない地域です。

僻地ということもあり良い意味で観光化されておらず、本州と奄美大島の文化が絶妙にブレンドされた独自の雰囲気に溢れています。

悪石島に伝わる"ボゼ"と呼ばれる仮面装束は、遥か南方のポリネシアを連想してしまう強烈なインパクトを持っています。

30年にわたりトカラ列島に通う著者ならではの、時代の移り変わりによる島の暮らしの変化、そして新たに島へ移住し第二の人生をスタートした人たちなど、ドキュメンタリーを見ているかのような人間ドラマも描かれています。

新書としてはボリュームがあり、島ごとの魅力が丁寧に解説されている読みごたえのある1冊です。

副題の"絶海の島々の豊かな暮らし"にある通り、地理的に不便な場所にあるからこそ独自の豊かな生活や文化が保存されていた側面があり、沖縄とは違った島の魅力を味わうことができます。