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引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

管理職の本分


主人公の友部陽平は、名門である東都生命に勤めるアラフォーの管理職という設定です。

友部は慶応大学出身で同期の中でも順調に出世街道を歩んできたエリートでしたが、肝心の東都生命が巨額の負債を抱えて経営が悪化し、東京地裁へ更生特例法を申請する事態へ陥ります。

つまり経営破綻ということになりますが、更生特例法が適用され、弁護士を保全管理人として再建計画へ乗り出すことになります。

友部は上席課長という立場であり、会社再建の最前線で活躍することを期待されますが、その前途には多くの難題が待ち構えていたのです。。

以上が序盤のストーリーですが、本書は元々「反乱する管理職」というタイトルで発表されたものです。

名門の大企業が経営危機に陥ったとき、大胆なリストラをはじめとした組織改革、銀行による融資、そして事業売却や受け皿となる会社(スポンサー)探しなど、やるべきことが山積しています。

また過去に会社の業績拡大に貢献した経営者が健在な場合、その影響力は絶大であり、スムーズなバトンタッチが難しい場合が多いのではないでしょうか。

またスポンサーとなる企業も何らかの打算があって支援することが大前提となりますが、破綻した企業の文化や社員をまったく顧みない非情な計画が実行される可能性もあります。

更には会社の混乱に乗じて、不当な利益を得ようとする悪意ある企業が近づくことがあるかもしれません。

そうした危機へ対して苦闘を繰り広げるのが、友部とその仲間たちなのです。

会社の業績が順調に伸びているときに管理職が活躍するのは当たり前ですが、危機に陥ったときにこそ、その真価が試されるのかもしれません。

会社を見限って自ら去ってゆく社員もあれば、不本意にもリストラせざるを得ない社員もいる、1つの大きな組織が危機を迎えたときにこそ本当の人間性が見えてくるのかも知れません。

危機にあって会社の中に踏みとどまり、撤退に際して奮戦する人間こそが、著者の高杉良氏にとって魅力的に映るのであり、世界を席巻する市場原理主義に一石を投じているのではないでしょうか。