下流同盟―格差社会とファスト風土
消費社会研究家、そして評論家の肩書をもつ三浦展氏が、2006年に発表した作品です。
多くの反響があった本ですが、発売から10年以上経過した最近になって初めて手にとりました。
簡単に説明すると下流同盟とは、アメリカに代表されるグローバリゼーションが日本において貧困層を固定化、貧富の差を拡大させるといった社会的な面から見た現象であり、ファスト風土とは、(主に地方都市の)郊外に乱立する大型ショッピングセンターが伝統的な固有の風土を破壊するといった文化の観点から見た現象であるという点です。
2つとも著者による造語ですが、世界中で広まりつつあるグローバリゼーションの与える影響を違う断面から切り取った本質的には同じ問題がもたらした現象です。
正確にいうと本書は三浦氏を含めた6人の学者や有識者たちの共著であり、こうした現象を様々な(地方都市を訪れたり、アメリカへの視察旅行などの)方法や視点で検証しています。
私自身が地方出身ということもあり、三浦氏の言うファスト風土化は実感として持っています。
本書で取り上げられているように郊外に大型ショッピングセンターが次々と建設され、駅前がシャッター商店街となる現象は、まさに私の故郷でも起こっている現象です。
確かに何でも揃い、遅くまで営業している大型店は生活する上では便利ですが、昔からの個人商店が次々と閉店し、地域のコミュニティまでもが破壊されているという点もある程度は当てはまっています。
本書が発売されてから10年以上経過した今でもこうした現象は見られますが、今は更に新しい段階に入ったという思いもあります。
それは少子高齢化と人口減少、さらにAmazonに代表される便利で手軽なネットサービスの浸透により、こうした大型ショッピングモールさえも潰れる時代に入ったというものです。
結果的に田畑や森林を潰して建てられた巨大な廃墟、そして広大な無人駐車場が日本各地に残される可能性はかなり高いと思います。
「便利さを追求した結果が幸福をもたらすとは限らない。」
文字に書くと当たり前ですが、断絶したコミュニティと巨大な廃墟しか残らない日本の未来を防ぐためにも、本書の警告する内容は決して軽く見ることはできません。