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ラヴクラフト全集 2



20世紀前半の怪奇小説作家H・P・ラヴクラフトの全集第2巻です。
本書には以下の3作品が収められています。

  • クトゥルフの呼び声
  • エーリッヒ・ツァンの音楽
  • チャールズ・ウォードの奇怪な事件

まず「クトゥルフの呼び声」はラヴクラフトの世界を体系化した「クトゥルフ神話」を冠した作品となり、その世界観を知る上で欠かせない作品です。

クトゥルフは人類が出現するはるか昔より地球を支配していた"古き神"であり、何らかの事情により海底奥深くで眠りについています。

ただクトゥルフには寿命どころか時間さえも超越した存在であり、眠りについてさえ感受性の強い人間の夢に姿を現して語りかけることが出来ます。

そしてクトゥルフを信仰する「クトゥルフ教団」なるものが世界各地に存在し、怪しげでおぞましい儀式を今でも続けています。

もちろん普通はそうした秘密を一般人が知ることはありませんが、たまたま好奇心の強い人間がその秘密を知ることになり、その彼が残した手記が作品という形をとっています。

手記の中で人間の想像をはるかに超越した超自然、超宇宙的な秘密が徐々に明らかになってゆくのです。


エーリッヒ・ツァンの音楽」は本書の中ではもっとも短い作品であり、ラヴクラフトの特徴であるコズミックホラーというより、古典的な怪奇小説の雰囲気が漂う作品です。


チャールズ・ウォードの奇怪な事件」はラヴクラフトの残した作品の中でも指折りの長編であり、過去と現在を往復しながら壮大な秘密が明らかになってゆきます。

物語はある青年の好古趣味がきっかけに始まりますが、それが記録から抹殺された先祖の経歴、そして古代の神秘へと繋がってゆき、青年は怪奇と恐怖に満ちた世界の深淵へ魅せされてゆくのです。

「真実を探求する」といば聞こえは良いですが、ラヴクラフトの世界において人類にとって"真実"とは知っていはいけない禁忌であり、その深淵を覗き込んだ人間は狂気の世界へ足を踏み込むことになるのです。