サイコパスの真実
2017年、神奈川県座間市にあるアパートの一室で、9人の頭部と骨などが見つかるという衝撃的な事件が起きました。
最近では現実とは思えないほどの事件を起こす凶悪犯罪者に共通する特徴として「サイコパス」が注目されています。
そして犯罪者の脳の機能や構造に関する研究が進み、少しずつサイコパスに関する新たな事実も分かりつつあり、従来のサイコパスへの常識が大きく変わろうとしています。
本書では犯罪心理学を研究している原田隆之氏が、興味本位ではなく、最新の科学的知見に基づきサイコパスを解説している入門書です。
まずサイコパスという特性をもつ人すべてが犯罪者ではなく、むしろその大多数が犯罪とは無関係であると前置きしています。
一方で統計では100人に1人はサイコパスである可能性があることも判明しており、その原因(遺伝なのか生活環境によるものなのか)の解説、またその治療法についても言及しています。
サイコパスにはさまざまな形態をとり、相当の多様性があるため、どの特徴が強調されるのかは人それぞれなのですが、サイコパスの特徴として挙げられているものを本書より抜粋してみたいと思います。
第一因子:対人因子
表面的な魅力一見人当たりがよく、魅力的である。
相手を惹きつけるだけの魅力と、卓越したコミュニケーション能力を持つが、そこに感情はなく、それは偽の優しさである。
他者操作性
心に弱みや不安を抱えている人を見抜くのが得意で、巧みのその心の隙間に取り入ろうとする。
そしてその相手は自分の欲求を充足するための対象でしかなく、経済的な搾取や暴力等を利用して自らの支配下へ置こうとする。
病的な虚言癖
息を吐くように嘘をつき、しかも嘘がばれてもまったく動揺の気配を見せない。
あまりにも平気な態度であるため、相手は狐につままれたような気分になり、こちらの方が間違っていたのではないかと思うほどである。
性的な放縦さ
不特定多数の相手と性的な関係を結ぶ。
もちろんそこに愛情はなく、自分の性的欲求を充足させるための単なる道具としか見ていない。
自己中心性と傲慢さ
自分が世界の中心であると信じて疑わず、自分自身がルールであり、ほかに従うべきルールはないと思っている。
自らの行為が周囲から責められることがあっても、悪いのは社会であり、そのルールが間違っているとすら考える。
第二因子:感情因子
良心の欠如他者への思いやりや配慮を欠き、相手がどうなろうがまったく気にかけない。
つまり悪事をはたらいても良心の呵責から後悔することもない。
共感性や罪悪感の欠如
知能に問題ななく善悪の区別はついているが、共感性という歯止めがないため平気で悪事をはたらく。
被害者へ遺族の感情に思いを馳せることができないため、愛情や反省を口にすることはできても心はまったく動いていない。
冷淡さ、残虐性
他人にはとことん冷たく、冷酷になることができ、残忍なことも平気で行う。
暴力への抵抗感がないため、歯止めが利かないのである。
浅薄な情緒性
一見人当たりがよいが、よくよく付き合うと言葉だけが上滑りして感情自体はとても薄っぺらい。
情緒を表す語彙が乏しく。「言葉を知っているが、響きを知らない」状態。
不安の欠如
不安や恐怖心が欠如している。
そのため相手を傷つけ、社会のルールに反する行動であっても大胆に行動を起こすことができ、そこにためらいや動揺は見られない。
第三因子:生活様式因子
現実的かつ長期的目標の欠如彼らは現在にしか根を張っていないので、過去のことにはこだわらず、将来のことも考えない。
そのため貯金や健康維持に関心がなく、その日暮らしのような浮き草的生活となりやすい。
衝動性と刺激希求性
目先の楽しみの心を奪われて、後先のことを考えない。
違法薬物や危険運転、頻繁な引っ越し、ふらっとあてもなく旅に出ることも多い。
無責任性
生活のあらゆる面で無責任は行動を取る。
借金を平気で踏み倒す、仕事でも遅刻や欠勤の常習犯であり、結婚しても配偶者を顧みることなく、育児や親としての責任を放棄する。
第四因子:反社会性因子
これまでの良心や共感性を欠き、衝動的で無責任な彼らの行動パターンは、当然のことながら犯罪という形を取ることが多い。 なかには巧みに法の網をかいくぐったり、法律違反すれすれのところでうまく立ち回っていたりする者もいるが、反社会性という点に関しては変わらない。最後に忘れてならないのは、安易にサイコパスというレッテルを貼るのは、その人が社会的に相当な不利益を受けることになるため慎まなければなりません。
また一般人がサイコパスを正確に見抜くのは不可能であり、適切な資格や学位を有した者が、さらに定められた研修と訓練を受けてはじめて診断可能になるそうです。
つまりここに記載されたサイコパスの特徴は専門家の解説として参考程度にすべきでしょう。