レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

さかさま世界史 英雄伝


寺山修司氏が世界史に登場する偉人たちを縦横無尽に批評してゆく1冊です。

本書には20人以上の偉人が登場しますが、1人につき文庫本で10ページほどでテンポよく次々と批評しています。

  • コロンブス
  • ベートーベン
  • エジソン
  • イソップ
  • ガロア
  • シェークスピア
  • 二宮尊徳
  • ゲーテ
  • ダンテ
  • スタンダール
  • 毛沢東
  • カミュ
  • ニーチェ
  • 聖徳太子
  • カフカ
  • マルクス
  • 紫式部
  • セルバンテス
  • トロツキー
  • 孟子
  • キリスト
  • プラトン
  • リルケ

寺山修司といえば歌人や小説家としても有名ですが、何といってもラジオやTVドラマの脚本、そして演劇作家として知っている人が多いのではないでしょうか。

彼の特徴を1つ挙げるとすれば、「つねに批判的」であるという点です。

それは世の中で大多数が当たり前、もしくは良いとされている価値観へ対して、それを決して鵜呑みにはせず疑ってかかるという姿勢であり、世の中で悪いとされている物事へ対してもその姿勢は同様です。

またそれらの物事を批判するにあたり、評論家のような難解な言葉を用いず、時には土俗的で卑猥な表現を使いつつユーモアを交えつつ評論している点も寺山風といえるのではないでしょうか。

こうした姿勢は劇団・天井桟敷を主催し、アングラ演劇というジャンルを開拓してゆく実行力とも密接に関係してゆきます。

ここまで書けば分かると思いますが、本書に登場する誰もが知っているような偉人たちは、寺山氏の前で同様に料理されてゆくことになるのです。

ドイツの文豪ゲーテの作品に登場する恋愛に悩む主人公へ対して精神主義型自家発電と表現したり、聖徳太子を国家権力の元凶であり、今も高額紙幣として幅を利かせ続けていると断じてみたり、プラトンに至っては毛深いただの中年男であるソクラテスへラブレターを書き続けた男だと書かれています。

本書は偉人たちの伝記はないという点は注意であり、世間一般の評価から偉人たちを"さかさま"に見ることで寺山ワールドを楽しめる1冊なのです。