レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

わが友 本田宗一郎


著者はソニー創業者の井深大氏であり、タイトルにあるホンダ創業者・本田宗一郎氏とは長年に渡り深い交流があったことはよく知られています。

井深氏は2歳年長である本田氏を兄貴と慕い続けましたが、1991年に本田氏が亡くなり、彼との思い出を振り返りながら、その素晴らしさを広く知ってもらうために本書を執筆したといいます。

2人に共通するのは、優れたエンジニアであり、今でも緻密で高品質な製品を生み出す「ものづくり日本」の原点を築き上げ、それを象徴する人物とされている点です。

また2人は世界一の製品作りを目指し続けた一方で、本田宗一郎には藤澤武夫、井深大には盛田昭夫という卓越した経営やブランド戦略を担ったパートーナーが存在した点も共通しています。

一方で井深氏自身が言うように2人の性格は正反対で、豪快で楽天的な本田宗一郎、控えめで慎重な井深大という面白い組み合わせでした。

本書では過去に2人で行った対談、また本田宗一郎の著書を引用しながらも、2人の間だけの個人的なエピソードも紹介しながら、誇張や飾り気のない等身大の本田宗一郎を読者に知ってもらいたいという試みが読み取れます。

つまり本田宗一郎は豪快なエピソードに事欠かない一方で、世間には"誰も逆らえないワンマン経営者"、"思いつきで行動するエンジニア"といった誤解も存在していたのです。

先ほど説明したように2人に共通するのは技術者という点であり、そのため会社の経営や組織のマネジメントといった点に言及している箇所は少なく、とにかくよい製品を生み出すために必要なこと、そして技術者としての使命感や心構えなどが中心に書かれています。

たとえば「できっこない」という常識に囚われない発想、頭で理解するより自分で試して失敗する重要性、ときには数字や理論よりも直感を信じることなどです。

本書が発表されて30年近くが経過し、現在ではAIの登場が話題になっていますが、ものづくりの本質は今も変わらないと思います。

もしも将来、エンジニアとして活躍したいと考えている人であれば本書から得られるヒントは多いのではないでしょうか。

最後に1つ加えるならば、著者を含めてこの2人は数多くの苦労と失敗を重ねた上で世界に通用するブランドや企業を作り上げてきたということです。

つまり2人が歩んできた道はコスパやタイパといった概念とは程遠いものであり、時には効率を無視してひたすら全精力を打ちこむ経験も大切ではないでしょうか。