レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

下北サンデーズ

下北サンデーズ (幻冬舎文庫)

下北沢で活動する小劇団「下北サンデーズ」を舞台に繰り広げられる、愛と青春のストーリーの物語。

著者の石田衣良氏はベストセラー作家として知られていますが、彼の作品を読んだのは今回が初めてです。

大学進学のために田舎から上京した"里中ゆいか"が、下北サンデーズに入団を志願するところから物語が始まります。

出だしは丁寧に書かれていますが、ページが進むにつれ少しずつテンポが速くなり、後半は怒涛にようにストーリーが展開してゆく辺りに読者を引き込んで離さないところに有名作家としての技量を感じます。

下北沢という空間を余すことなく利用し、夢を追う若者の喜怒哀楽が濃厚に伝わってくる内容です。

私も田舎から上京してきた1人ですが、超高層ビルが立ち並ぶ単純な都会のイメージとは違った、オシャレな中にもどこかレトロな雰囲気の漂う私自身の"下北"のイメージと重なる部分があり、すんなりと物語に入ってゆけました。


また登場人物はどれも個性豊かであり、1人1人の夢や葛藤も様々です。
読者にとって、その中に1人くらいは自らの青春と重ねられる人物が登場するのではないでしょうか。


ストーリー展開はかなり分かりやすく、これは著者がTVドラマの原作を意識していたことと無縁ではないかもしれません(実際にはドラマを見ていませんので、あくまで推測です)。


もちろんストーリーが単純であることが小説の良し悪しを決める要素ではなく、はじめに書いたようにテンポや雰囲気に重点を置いた楽しめる作品であることは間違いありません。