レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

統ばる島

統ばる島

沖縄の八重島諸島の8つの島それぞれを舞台にした、8つの短編小説からなる1冊です。

今回はじめて読んだ作家ですが、著者の池永一氏は石垣島出身ということもあり、他にも沖縄を舞台とした作品を何冊か発表しているようです。

八重島諸島は15世紀に琉球王国の版図に組み込まれましたが、元来、独立心が旺盛で自ら「ヤイマンチュ」と称し、沖縄本島の「ウチナーンチュ」と意識的に区別していたようです。

一方で文化圏としては1つと考えてもよく、沖縄本島のように開発(都市化)が進んでいない分だけ伝統的文化が色濃く残っている地域であるともいえます。

著者もそうした背景を意識的に取り入れ、八重島諸島の日常と神秘性を織り交ぜた内容に仕上がっています。

小説の題材は恋愛からホラー調のものまで多岐に渡りますが、作品全体のキーワードは島を守護する神々、未開の自然、御嶽、そしてニライカナイ信仰を軸とした、ファンタジー色の強いものになっています。

沖縄の文化に興味を持っている人であれば夢中で読めてしまうこと間違いなしの作品ですが、そうした予備知識が無い人にとっては作品中に詳しい解説が無いため、本作の魅力が十分に伝わらないかも知れません。