若き実力者たち 時代を疾走する12人
昭和47年~48年まで雑誌「月間エコノミスト」に連載された沢木耕太郎氏の記事が書籍化されたものです。
20代~30代にして世の中から注目されるようになった"各分野の若き才能たち"を取り上げた「人物紀行」であると著者は紹介しています。
本書の目次は以下のとおりで、12人が紹介されています。
- 巨像の復活 尾崎将司
- 廃墟の錬金術士 唐十郎
- 疾駆する野牛 河野洋平
- 過ぎ去った日々ではなく 秋田明大
- 華麗なる独歩行 安達瞳子
- 面白がる精神 畑正憲
- 神童 天才 凡才 中原誠
- 錨のない船 黒田征太郎
- 望郷 純情 奮闘 山田洋次
- 人魚は死んだ 堀江謙一
- 十二人目の助六 市川海老蔵
- 沈黙と焔の司祭 小澤征爾
今から40年前に書かれた作品であるため、"当時の若き才能たち"は私よりだいぶ年上であり、現在はその分野の大御所となった人たちも少なくありません。
とはいえ彼らの若き日々の姿を手軽に読めるのは、本の魅力の1つであるといえます。
いつの時代にも若くして才能を発揮する人物はいますが、彼らに共通するのはすべてが順風満帆に運んだ例は無いということです。
分かり易い例でいえばプロゴルファー尾崎将司です。
甲子園の優勝投手として、当然のように将来を期待されてプロ野球(西鉄)へ入団します。
しかし野球での成績は振るわず、わずか3年でプロ野球の世界から去ることになるエピソードは有名です。
そして妻子を故郷に残し、単身上京してプロゴルファーを目指す日々を送ります。
いかに「才能」があろうとも、何の障壁も経ずに開花した才能はありません。
だから"若き天才"とは、早くして自らの宿命を悟り、その道に向かって邁進することのできる才能を持った人なのかも知れません。
著者の沢木氏は彼らの才能を手放しに賞賛するのではなく、その心底にある苦悩や葛藤を丁寧に探ってゆきます。
読者である私たちも、そんな彼らに親近感を持って本書を一気に読むことができます。