レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

村上海賊の娘(四)


ベストセラーとなった歴史小説「村上海賊の娘」もいよいよ最終巻です。

もちろんクライマックは、村上海賊が活躍する第一次木津川口の戦いです。

毛利、そして能島・因島・来島村上家が総力を結集した水軍が、織田水軍が激突するという構図です。

織田方は和泉国淡輪(たんのわ)を根城にする海賊・真鍋七五三兵衛が総大将ですが、かつては主人公・村上景に惚れていた時期があり、他を圧倒する勇猛果敢なラスボス感たっぷりの存在として描かれています。

3巻の後半から4巻すべてを木津川口の戦いに割いており、とくに4巻はすべてが海戦シーンで埋め尽くされています。

個人的には作品全体のバランスから考えるとすこし長過ぎると感じてしまいますが、3巻までに登場した毛利方・織田方の武将たちの戦う姿が万遍なく描かれており、それぞれの人物に思い入れを持った読者を楽しませるための配慮が感じられます。

史実に忠実なタイプの歴史小説では、重要な登場人物がいつの間にかフェードアウトしてしまうことがよくありますが、本作品に限ってはそうした心配はありません。

とにかく織田方が優勢になったり、毛利方が盛り返したりといった場面が繰り返し描かれますが、潮流や風の向きによって船が流されたり、弓矢や焙烙玉の応酬、そして相手の船に乗り移っての接近戦など、海戦ならでは描写が楽しめます。

ちなみに文庫本の巻頭には作品の舞台となった瀬戸内海や大阪湾の地図が掲載されています。
私自身は、物語を読みながら巻頭地図を何度も往復しながら読書するタイプですが、作品を読み終わったあとに現地を訪問するための参考地図としても使えます。

さらに今治市の大島には、村上海賊ミュージアムがあります。
作品で何度も登場した実物大の小早船村上武吉が使用した陣羽織、関船の模型などが展示されているようであり、いつか訪れてみたい場所です。