レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

村上海賊の娘(一)


2014年本屋大賞に輝いた和田竜氏の歴史小説「村上海賊の娘」を今さらですが手にとってみました。

室町から戦国時代にかけて瀬戸内海を拠点に活躍した村上海賊を取り上げています。

主人公は戦国時代に活躍し、村上海賊の最盛期を築き上げた村上武吉の娘という設定です。

作品中に"女海賊"というインパクトを残すために創作された人物だと思われますが、ほかにも歴史の中で活躍した"女傑"かいることを考えると、決して突拍子もない設定とは言えません。

海賊として活躍した村上氏は信濃村上氏に起源があるという説もあり、もしそうであれば武田信玄と争った北信濃の村上義清も同族ということになります。

海賊として瀬戸内海に定着した村上氏はやがて3家に別れますが、戦国期における各家の立場を簡単に紹介します。


能島(のしま)村上家
3家の中では最大の勢力を持ち、戦国時代においても独立勢力としての地位を保つ。

因島(いんのしま)村上家
毛利氏の家臣・小早川隆景の元で水軍として活躍する。

来島(くるしま)村上家
伊予国の守護・河野氏の水軍として活躍する。毛利氏との関係も良好。


主人公の村上景(きょう)は、能島村上氏という設定です。

戦国時代には同族同士の争いが全国各地で見られましたが、少なくとも村上氏同士の関係は比較的良好だったようです。

そして彼ら村上海賊にとってはある日湧いたように共通の敵が登場します。

それが石山本願寺へ攻め込んだ戦国の風雲児・織田信長です。

毛利家は急速に成長する織田家と対抗する戦略上、本願寺と同盟を結ぶことになります。
そして各村上氏も毛利家へ協力することを決定します。

結果としてこの石山合戦は10年間も続くことになりますが、それだけ当時の本願寺が強力だったことを示しています。

当時の本願寺の宗主は顕如(本願寺光佐)であり、彼を中心に組織された一向一揆たちは各地で猛威を振い、これには徳川家康も上杉謙信といった有力大名も苦戦しました。
また加賀のように守護大名が一向一揆に倒され、信徒たちによる自治が行われた地域さえありました。

中国地方を支配する毛利、瀬戸内海を支配する村上水軍、一向宗徒を組織する本願寺が手を組み、織田信長と対決する図式が作品の背景にあります。

今回作品の内容をほとんど紹介はしていませんが、やはり戦国時代は歴史小説にとって華の舞台なのです。