レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

鉄のライオン



最近はノンフィクションや歴史ものを読む機会が多かったこともあり、気分転換に普通の小説作品を手にとってみました。

本書は著者自身の大学生時代のエピソードを元に書き上げた青春小説です。

著者である重松清氏の年齢は私よりひと回り年上ですが、田舎から大学進学のために上京してきたという点は作品中の主人公と共通しています。

さらに言えば、あまり勉学に熱心でなかった点、お金に余裕がなかった点、それでもお酒を飲む機会だけはやたらと多かった点なども作品に登場する主人公と共通していることもあり、どこか懐かしさと親近感を覚えるエピソードばかりです。

初めて経験する東京での一人暮らし、同学年の友人、やけに大人びて見えた先輩、アルバイト先での出来事など、どれも多くの読者の学生時代に当てはまる経験だと思いますが、そうした日常が少しだけドラマチックに描かれています。

そもそも学生は好奇心と行動力だけは旺盛なものであり、傍から見れば生産性の無い、つまり社会の役に立つ存在ではありません。

一方でのちに振り返ると、無為に過ごしたような学生時代の日々が人生において貴重な時間だったと気付くものです。

2時間くらいで一気に読める分量ですが、雑誌へ連載された5~10分程度で読める短編小説を文庫本としてまとめた1冊であるため、少しずつ楽しむことをお勧めします。