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ジャンル問わず気の向くまま読書しています。

やめられない ギャンブル地獄からの生還



作家であり精神科医でもある帚木蓬生氏が、自らも多くの患者を治療してきた経験を持つギャンプル依存の実態を紹介し、警鐘を鳴らしいる本です。

帚木氏の作品は何冊か読んできましたが、作家ではなく医師としての立場から執筆された本を読むのは今回がはじめてです。

まずアルコールや薬物依存という言葉はニュースなどでよく聞きますが、ギャンブル依存に関してはそこまで大きく報道されていないような気がします。

一方、日本にはギャンブル依存症者が推定で320万人もいるとされ、大きな社会問題になりつつあります。

かなり前に「パチンコ「30兆円の闇」」という本を紹介しましたが、パチンコはギャンブル場としてではなく遊技場という名目で日本各地に点在しています。

つまり日本は成人であれば誰でも気軽にギャンブル場へ入り浸れる環境にあり、実質的に世界一のギャンブル大国という状態にあります。

著者もこの環境こそが深刻なギャンブル依存を生み出していると本書で指摘しています。

競馬やオートレースなどの公営ギャンブルもありますが、ギャンブル依存症者100人のうち実に82人が、パチンコ・スロットによってギャンブル地獄にはまり込んだという統計があります。

私も本書を読むまではギャンブルで借金を作る人は、賭け事が好きな性格なんだろうという程度の認識でしたが、精神疾患であるギャンブル依存症となった人間がギャンブルを続けるのは「意志」と関係ないと解説しています。

つまり覚醒剤中毒者と同じく脳の機能変化が生じてしまい、通常の意志が働かなくなっている状態なのです。

親や配偶者が借金を肩代わりして二度とギャンブルに手を出さないと誓約書を書いたところで、そこに個人の「意志」が存在しない以上、治療を行わない限り決してギャンブルを辞めることは無いと著者は解説しています。

本書ではギャンブル依存症者が陥る悲劇的な内容についても多くの具体的な例を紹介しています。
ある意味でアルコールや薬物依存以上にギャンブル依存が怖いのは、嘘によって借金や横領を際限なく繰り返し、経済的に本人のみならず家族の人生まで破滅させてしまう点です。

本書は作者が医師であることからギャンブル依存の治療についても詳しく解説しており、ギャンブラーズ・アノニマスギャマノンといった自助団体も大きく取り上げています。

ギャンブル依存から国民を守る強力な政策が必要な時期に来ている感じ、少なくともカジノ誘致など論外であるとことを実感した1冊です。