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ゴッホのあしあと



著者の原田マハ氏は2003年頃より執筆活動を開始していますが、その前にはューヨーク近代美術館などでキュレーターを勤めていたという変わった経歴を持っている作家です。

人気作家なので知っている人も多いと思いますが、私にとっては今回はじめて読む作家です。

ただし本書は新書という形から分かるように小説ではなく、著者がフランスを訪れゴッホの足跡を辿り、そこに考察を取り入れたドキュメンタリー風の作品になっています。

さらに付け加えるならば、本書は2018年に出版されていますが、彼女は2017年にゴッホを題材とした小説「たゆたえども沈まず」を発表しており、同作品の作家ノートと位置づけることもできます。

私は肝心の小説の方を読んでいないのですが、2021年に上野の東京美術館で大規模なゴッホ展が開かれ話題になりました。

実際にゴッホ展に行ったわけではありませんが、当時何となく気になっていたこともありタイトルだけを見て本書を手にとりました。

よく知られているようにゴッホは生前にその作品を評価されることはなく、わずか37歳でピストル自殺により人生を終えています。

しかし没後にその作品が瞬く間に世界中で評価されるようになり、今ではその作品が世界でもっとも高額で取引される画家の1人になっています。

ここまでは私も知っていたことですが、本書を通じてパリやアルルをはじめとしたゴッホが辿った街の様子、そしてそこで描かれた作品が解説されてゆく過程で彼の人間像が具体的に見えてきます。

とくに絵の解説については著者のキュレーターとしての経歴が充分に発揮されており、絵画には素人の私にもその違いを分かりやすく説明してくれます。

つまり彼女の小説を読んでいなくとも、ゴッホの入門書としては最適であり彼の足跡を手軽に知ることができます。

以下は本書で紹介されている個人的に印象に残った作品です。

  • フィンセント・ファン・ゴッホ 「夜のカフェテラス」 (1888)

  • フィンセント・ファン・ゴッホ 「星月夜」 (1889)