船乗りクプクプの冒険
宿題嫌いのタローは、母親の目を盗んで冒険小説「船乗りクプクプ」を読み始める。
作者にはキタ・モリオとあるが、読み始めるとわずか4ページで終わってしまい、残りはすべて白紙でノートにでも使ってくれという言葉で終わっている。
これは原稿を書けない作者が執筆途中で姿をくらまし、やけくそになった編集者がそのまま出版してしまった作品なのである。
これに驚いたタローは突然気が遠くなってしまい、気付くと何と自身が作品中の主人公クプクプになってしまうのである。
ここまでが作品の導入部ですが、ともかくクプクプは仲間たちと共に大海原へ冒険へと乗り出すことになります。
一緒に航海を共にするのは、頭が少々ボケている短期で目の悪い船長、力持ちだが頭の回転が悪いヌボー、デブとノッポのコンビであるナンジャとモンジャという締まらないメンバーです。
物語のあらすじ自体は未知の島を発見して上陸し、そこで冒険を繰り広げるというありきたりのものですが、メンバーが締まらないだけに必然的にその内容もヘンテコなものになってしまいます。
大人が真面目に読む文学作品というよりも、作者の北杜夫が児童向けの冒険小説として書き上げた作品ではないかと思われます。
冒険小説といってもよく知られている「海底二万里」、「十五少年漂流記」といった本格的なものではなく、作品の半分以上はユーモアに満ちた内容になっています。
個人的には、おそらく主人公のタローのように勉強嫌いの少年でも気軽に読める内容にしたのではないかと勝手に想像していますが、作者の北杜夫のユーモラスで脱力感のある作風がうまくマッチした内容になっています。
ともかく荒唐無稽な内容ですが、作品全体としては不思議に起承転結が上手く考えられており、そこにも北杜夫らしさを感じます。
もちろん大人でもバカバカしいと思いながら楽しむことができる作品になっています。