レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

「ふたり暮らし」を楽しむ



下重暁子(しもじゅう あきこ)氏が定年後の夫婦の暮らしをエッセー風にまとめた1冊です。

簡単に言えば夫婦ともに定年を迎え、2人で向き合う時間をどのように過ごすかという本です。

世間一般に言えば今まで別行動だった2人が一緒に過ごす時間が増えることで、面倒なことや腹の立つことが増えストレスになるというところですが、著者は2人暮らしを楽しくる送る工夫をしてみようと提案しています。

たしかに熟年離婚をしない限りどちらか一方が先に逝くまで2人暮らしは続くのですから、建設的な意見だと思います。

ただ実際には著者が自らの体験に基づいて語っている部分が多く、ノウハウ本として読むよりは興味のある作家のエッセーとして読む方がおすすめであり、私もその1人です。

下重氏は昭和11年生まれであり、NHKアナウンサーを経て作家になっています。
一方の夫はテレビ局に勤めていた会社員であり、共働きの環境にあったようです。

食事の準備は料理が得意な夫の役割で、妻は皿の準備と洗い物に専念するといった役割のようです。

家計に分担のルールはあるものの、2人とも経済的には自立していることもあり、お互いの収入も貯金も知らないと言います。
服装についてはお互いに共有しているアイテムも多く、帽子やセーターが取り合いになることもあるようですが、その分買い物は2人で出かけることも多いようです。

こうして書いてゆくと他愛の無い内容ばかりになっていますが、要は作者の暮らしをエッセー風に紹介しているだけなので、突拍子のないアイデアが出てくることはありません。

どことなく参考にしつつ、単純にエッセーとして楽しめれば充分だと思います。

サブタイトルに「不良老年のすすめ」とありますが、これも自分を年寄りだと決めつけず、「新しい趣味を見つけて夢中になるべきだ」、「周りの生活スタイルにこだわる必要はない」といった著者の主張の反映であり、無趣味で変化のない生活パターンに陥りがちな老年夫婦たちへのエールでもあるのです。