レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

Deep Skill



若い頃の一時期はよくビジネス書を読んでいましたが、ここ最近はめっきり読む機会が減ってきました。

それには実用的な書籍を敬遠して、趣味としての読書を楽しみたいという理由がありましたが、今年はもう少し読書のスタンスを広げて、こうしたビジネス書をたまには紹介したいと考えています。

本書は書店のビジネス書の新刊コーナーで適当に手にとって購入した1冊です。

著者の石川明氏は1988年にリクルートへ入社し、インターネット媒体のオールアバウトの創業メンバーだったという経歴を持っています。

タイトルのディープスキルとは、作者の造語であり簡単に言えば「人間心理」と「組織力学」に対する深い洞察力と的確な行動力といった能力を指します。

私なりに表現するとすれば、不朽の名書といわれているデール・カーネギー「人を動かす」の内容をすこし泥臭くして現代風にリノベーションした1冊だと言えます。

本書には21のディープスキルが紹介されていますが、以下に列挙してみます。

  • 01 「ずるさ」ではなく「したたかさ」を磨く
  • 02 上司とは「はしご」を外す存在である
  • 03 優柔不断な上司に「決断」を迫る
  • 04 勝負どころでは、あえて「波風」を立てる
  • 05 会社で「深刻」になるほどのことはない
  • 06 弱者でも「抜擢」される戦略思考
  • 07 「専門性の罠」に陥ってはならない
  • 08 他社の「脳」を借りて考える
  • 09 "敏腕ビジネスマン"のように話さない
  • 10 「協力関係」の網の目を張り巡らせる
  • 11 親切なのに「嫌われる人」の特徴
  • 12 まず、自分の「機嫌」をマネジメントする
  • 13 組織を動かすプロセスを「企画」する
  • 14 上司の「頭の中」を言語化する
  • 15 「権力」を味方につける人の思考法
  • 16 「合理性の罠」に陥らない方法
  • 17 「効率化」で墓穴を掘らない思考法
  • 18 「調整」とは"妥協点"を探すことではない
  • 19 人間の「哀しさ」を理解する
  • 20 「やり切った」うえでの失敗には価値がある
  • 21 「使命感」が最強の武器である

本書ではとくに大手企業といった大きな組織の中で、新規事業を始める人を念頭に置いて書かれています。

それは著者が社内起業に特化したコンサルティング会社を経営しているからであり、同時にもっとも得意とする分野だからです。

そしてそう考えると、本書で紹介されてるスキルの重要性も納得が行きます。

一方で実際には、大企業の組織の中で既存の事業や業界の固定概念にとらわれない新規事業を企画し、成功させるという行為が困難であることは容易に想像がつきます。

私自身は大手企業に所属していた経験はありませんが、取引先には大手企業もありそこでの組織の複雑な力関係やルールの煩雑さといった話は時々耳にします。

こうした環境においては、企画やアイデアの斬新さだけでは物事はまずうまくは進みません。

現実的に何よりも本書に紹介されているような人や組織を巧みに動かすスキルが求められます。

一方で本書で紹介されているのはいわば対人スキルというべきもので、具体的なメソッドや方程式によって当てはめることができないのも事実です。

本書を参考にしながらも、状況に応じた言動が必要となります。
そして何よりも地道な努力と、自らの人間性を磨くことも忘れていはいけないのです。