運動脳
本屋でこの「運動脳」を見かけたとき、タイトルから運動でパフォーマンスを発揮するための脳の使い方を解説した本だと思いました。
しかし実際はまったく違い、人間の持つ器官の中でもっとも複雑でそれゆえ科学的に解明されていない部分が多い、「脳」の可能性を引き出すためには「運動」がもっとも優れているという主旨の本です。
本書の目次は以下の通りです。
- 第1章 現代人はほとんど原始人
- 第2章 脳から「ストレス」を取り払う
- 第3章 「集中力」を取り戻せ!
- 第4章 うつ・モチベーションの科学
- 第5章 「記憶力」を極限まで高める
- 第6章 頭のなかから「アイデア」を取り出す
- 第7章 「学力」を伸ばす
- 第8章 健康脳
- 第9章 最も動く祖先が生き残った
- 第10章 運動能マニュアル
運動をするこでストレスに強くなり、うつ病を改善し、集中力や記憶力、さらには創造力を高め、認知症や老化を防ぐといった驚くべき内容になっています。
運動といってもアスリートのような激しいメニューではなく、30分の軽いランニングやウォーキングといった内容です。
(むしろトライアスロンのような苛酷な運動はマイナス面のほうが多い)
本書に書かれていることが事実であれば、睡眠薬、抗うつ薬、抗認知症薬などの医療品、さらには脳トレなどの商材なども不要になってしまいます。
著者はそれを「まさにその通り」であると断言し、世界中にこの考えが広まらない理由は「お金」の問題だとしています。
たとえば新薬の開発には莫大な費用がかかり、その他の商材でも同様に宣伝やマーケティングへ多くのコストが投下されています。
コストがまったくかからない運動、たとえば「うつ病には薬よりも運動が効果的」といったような利益をもたらさない宣伝へコストを投下する企業は現れません。
つまり本書に書かれていることは多くの企業にとって「不都合な真実」なのです。
そこで読者が興味を持つのは、「なぜ運動が脳に良いのか?」、「どのくらい効果があるのか?」といった点だと思いますが、本書ではほぼ全編に渡って世界中で行われたさまざまな実験データと共に、その根拠と仕組みが解説されいます。
一般的に運動が健康によいと思っている人が大多数だと思います。
一方で運動がもたらす恩恵はダイエットだけでなく、お金では買えないほど貴重なものであることを本書は示唆しており、運動不足を実感している人がいればまずは本書を手にとってみてモチベーションを高めてみてはいかがでしょうか。