レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

コロナとバカ


私にとって一番長くTVで見てきた芸人といえばビートたけしです。

昔ほどTVを見なくなって久しいですが、今でも現役で活躍している姿をたびたび目にします。

また映画監督としても国際的に有名であり、多彩な才能を発揮していることは多く人が知るところです。

作家としての活動も知られており、今までかなりの数の著書を出版しています。

一方で私は今まで彼の著書を1冊も読んだことがなく、比較的最近出版された本書を手にとってみました。

タイトルからわかる通り、本書はコロナ禍の最中(2021年)に発表されており、世の中を色々な角度から評論しています。

もちろんお馴染みのキャラクターは本書でも健在であり、冗談を交えながら歯に衣着せぬ発言をしています。

はじめの章では"コロナがあぶり出した「ニッポンのバカ"と題して、コロナ対策のちぐはぐな政策、またコロナ警察に代表される行き過ぎた同調圧力へ対して容赦なく批判を加えています。

本の良いところの1つは、TVでは炎上するような発言や表現も比較的寛容に受け止められるという点です。

先行きの見えない当時の状況、とくに人を集めて笑ってもらうことを生業にする芸人たちにとっては死活問題でしたが、それだけにその舌鋒はTVでの発言よりかなり鋭くなっていると感じます。

続いての章は"さよなら、愛すべき人たちよ"と題して、最近亡くなってしまった有名人へ想いを馳せています。

まず最初に言及されているのが志村けんであることが意外でした。

いわばライバル関係でお笑いの方向性も異なるため、それほど仲は良くないと勝手に思っていましたが、昔はよく飲みに行った仲だと言います。

ビートたけしにとって志村けんの存在は、仲間というより戦友であったといい、2020年で一番ショックな出来事だったと語っています。

ほかに渡哲也にも言及してますが、カッコいいと感じる憧れの存在だったようです。

最終章では、"ニュース・テレビの「お騒がせ事件簿」"と題して、芸能人たちの不祥事を評論しています。

かつて自分自身が起こした有名なフライデー襲撃事件は、今の時代では完全に芸能界引退レベルの不祥事だったはずです。

もちろんそれは彼自身も充分に分かっており、その上で近年は芸人に対する世間の目が厳しくなっていることを嘆いています。

そもそも芸人に限らず、役者もアーチストという人種は本来ロクでもない人間にも関わらず、とくに芸人に関しては多方面へ進出して「品性を求められる仕事」までに手を出した結果のしっぺ返しだと断言しています。

それでも不倫をネタにできないような芸人はダメだ、遊び方が下手などなど、個人名を挙げて手厳しく批評していますが、ビートたけしほどのキャリアと実績を持つ芸人がいない状況だけに反論できる人も少ないのではないでしょうか。

本書から感じるビートたけしのイメージは、テレビというよりも深夜ラジオで縦横無尽にしゃべり倒していた頃の"ビートたけし"に近いかもしれません。