巨大企業に勝つ5つの法則
タイトルから中小企業が巨大企業と競争するための戦略を解説した本だと容易に想像できますが、ビジネス本の視点としてありふれたものであり、かつ15年近く前の2010年出版ということで個人的にはあまり内容には期待していませんでした。
一方で私自身は1度も大企業に所属したことはなく、小さな世帯の企業の方が性が合っているという自覚があることから、なにかヒントらしきものが1つでも書かれていればと思い古本として購入したものです。
まず結論から言うと、よい意味で裏切られた1冊でした。
私自身も間近で見てきましたが、大企業はフットワークが重く、新しい手法や分野に挑戦する意欲に乏しいという傾向があります。
それでも圧倒的な資金力と組織力で安定した経営を実現し、社員の待遇は厚く、大規模なプロジェクトを遂行できるという面もあり、一般的に見ればやはり巨大企業の方にメリットが多いと感じます。
先ほど挙げた巨大企業のデメリットについては本書でも言及されていますが、本書ではそれを体系的に解説し、さらに新しい視点を提供してくれます。
それは「劣勢であることを強みにする」という逆説的な発想です。
とはいえ"劣勢"は"劣勢"であり、それ自体が有利へ働くことはありませんが、本書では以下の通り述べられています。
後がないから全力を出すしかない。
巨大企業と対峙した小企業にとっては「有事」であり、組織が実力主義となり全力で取り組むことができる。
大企業が持つ過去の成功体験はノイズとなり、必ずしも新しい市場で役立つとは限らない。
(成功の)未経験者の方が画期的な製品やサービスを生み出しやすい。
経験がない者は、体面や外見と気にすることなく他者から「貪欲に学ぶ」ことができる。かなりシンプルなように見えますが、本書ではこうした1つ1つの項目について具体的な事例が付け加えられており、理解しやすい内容になっています。
この「貪欲に学ぶ」という行為はもっともノウハウを効率的に吸収できる方法である。
後半に入ると「変人を」重視する、サムライをリーダーにするといった、社内組織の秩序を保つために大企業が実行しにくい抜擢人事についても言及しています。
ここで挙げられている具体的例は、個人的にファンでもある「プロジェクトX」にも登場しそうな人たちであり、参考になると同時に楽しく読むことさえできます。
はじめに紹介したように約15年前に出版された本ですが、今でも充分に参考にできる点が多く、内容もよくまとまっている優れたビジネス書としてお勧めしたい1冊です。