もうすぐブログで紹介してきた本も1000冊になろうとしています。
ジャンルを問わず気の向くままに読書しています。

こうして社員は、やる気を失っていく



多くのモチベーションの高い社員によって構成される企業は業績が良く、離職率も低くなります。

つまり社員のモチベーションを高めることは、企業が生存・成長してゆく上で欠かせない要素になりますが、その方法を紹介して解説するだけでは普通の切り口のビジネス書になってしまいます。

本書はこれを逆の視点、つまり社員がやる気を失ってゆくNGな上司の言動、企業文化や制度を紹介してゆき、社員のモチベーションを下げる要素を取り除いてゆくといったアプローチをとっています。

本書ではその過程で"ゼロベースシンキング"、"推論のはしご"、"内発的動機付け&外発的動機付け"、"DESC法"、"目標管理制度(MBO)"、"ウェルビーイング(Well-being)"、"ライフ-キャリア・レインボー"といった多くの実績のある手法や、働くことに関する研究・実験結果を引用して説得力を高めています。

ただし本書を最初から最後まで読んでゆくと最終的にはかなり多くの手法が登場することになるので、目次から自分たちが当てはまりそうな箇所を抜粋して実践してゆくのが効率的だと思います。

加えて本書は部下を持つ社長や管理職を対象にしていますが、例えば小さなチームを率いるリーダーであっても実践できる内容が含まれいます。

以下に本書の主要部分である2章と3章の目次を紹介してみます。

■第2章 社員がやる気を失っていく上司に共通する10の問題と改善策
  • 目を見て話さない。目を見て話せない。 - メンバーとまともに向き合わない上司
  • 理由や背景を説明しない - 「意味のない、ムダな仕事」と思わせる上司
  • 一方通行の指示 - 双方向のコニュニケーションがとれない上司
  • コントロールできる部分を与えない - 1から10までを指示する上司
  • 話を聞かずに結論を出す - 頭ごなしに決めつける思い込み上司
  • 意見も提案も受け入れない - 「自分が絶対」のお山の大将上司
  • 言うことに一貫性がない - 行き当たりばったり上司
  • 感覚だけで評価する - 結果を出しても評価されないと思わせる上司
  • 失敗を部下のせいにする - 責任転嫁し、自己保身に走る上司
  • 部下の仕事を横取りする - いつまでたっても「自分が主役」上司


■第3章 「組織が疲弊していく会社」に共通する15の問題と改善策
  • 個人が仕事を抱えすぎている - 不平等で不満ばかりの組織
  • 仕事を押しつけ合う - 会社的視点、共働の意識がない組織
  • 物事を決められない - コミュニケーション機能が不全な組織
  • 前例と成功体験から抜け出せない - 新しいものを生み出せない組織
  • 「理念」が言葉だけ - 細部に魂が入っていない組織
  • 「挑戦」「改革」・・空手形の言葉ばかり - 言葉と中身が一致していない組織
  • 社長がめちゃくちゃ忙しい - 社員を導くリーダーが不在の組織
  • 管理職が逆ロールモデル - めざすべき人物が不在で不幸な組織
  • いつもピリピリしている - 不機嫌、不安、不快がはびこる組織
  • マイナス要因の犯人探しに執心 - 「性悪説」による不信感と不寛容な組織
  • よくわからない人事異動がある - 「え、なんで?」不透明・不可解・不当な組織
  • いまだに長時間労働が美徳 - 時代の変化についていけない組織
  • 女性が出世しない - 価値観が偏った不条理な組織
  • 子育て、介護で働きにくい - 働きやすい制度の不足・不備がある組織
  • 長期的な展望を描けない - キャリア設計が不安、不明な組織

目次からわかる通り、経営コンサルタントである著者(松岡保昌氏)は、人間心理を徹底的に考え抜くスタンスで仕事に取り組んでいるとのことです。

モチベーションは目に見えないものであるが故に見落としやすいものであり、本書から参考になる要素は多そうだと感じました。