レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

古本食堂


本書は原田ひ香氏による神保町にある設定の「鷹島古書店」を舞台にした物語です。

主人公の鷹島珊瑚は帯広で老齢の両親を看取り、その後もそこで暮らしていましたが、兄の慈郎が急逝したことで、その遺言により兄の経営していた古書店を引き継ぐことになります。

しして本作品にはもう1人の主人公が登場します。
それは大学生の鷹島美希喜であり、彼女にとって珊瑚は大叔母にあたり、慈郎の生前から鷹島古書店に通っていました。

2人とも古書店の素人ではあるものの読書好きであることは共通しており、珊瑚は店主として、美希喜はアルバイトとして古書店を続けることになります。

古書店にはいろいろな客が訪れ、2人とその客との間に心温まるストーリーが繰り広げられてゆき、その過程で亡くなった慈郎の過去も明らかになってゆきます。

本書は6話から構成されていますが、それぞれに物語のキーとなる本、そしてグルメが登場します。

神田周辺には書店だけでなくカレーや喫茶店をはじめ昔からの有名店が密集していることでも知られており、作品中にはその名店のグルメが文字通りストーリーの味付けとして登場します。

ちなみに作品中の古書店は架空のお店ですが、実在する有名店のグルメや書店が登場します。

私自身はしばらく神保町を訪れていませんが、とくに学生時代にはたびたび訪れていた思い出のある場所です。

九段下から神保町を経て神田駅へ向かう一帯は裏通りへ一歩入ると都心でありながらも昔ながらの風情が残っている界隈で、東京の中でも私が好きな場所の1つです。

とくに地方出身の私にとって古本屋が立ち並ぶ神保町の風景が新鮮だった記憶があります。

本ブログで紹介している本の3~4冊に1冊は普通の書店では並ばない、つまり増販予定がない実質的な絶版本であり、古本としてしか入手できません。

私の場合、近くで定期的に開かれる大規模な古本市を楽しみにしていて、そこでまとめてそうした本を購入するのがここ数年の年中行事になっています。

その古本市では毎回30店以上の古書店が出店していますが、その中には当然のように神保町の店もあります。

おかげで通常の書店で購入した本も含めると、常時20冊くらいの積読本がある状態です。

出版不況の中で応援の意味を含めてなるべくネットではなく書店で本を購入するようにしていますが、一方で古書店が持つ独特の雰囲気や文化も魅力的であり、両者がうまく共存できる時代が続いて欲しいものです。

本作品を読んで久しぶりに神保町へ行きたい気持ちになりました。