レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

ホームレス消滅


村田らむ氏の著書を読むのは今回がはじめてですが、著者が出演するYoutubeチャンネルをたびたび見ていたこともあり、著者のルポライターとしての活動内容は以前から知っていました。

また住んでいるエリアが比較的近いのか、ラーメン屋で並んでいる著者を見かけたこともあるため(もちろん声は掛けませんでしたが)、本を手に取る前から勝手な親近感を抱いていました。

著者は昔から自殺の名所として有名な青木ヶ原樹海、かつて凄惨な事件が起きた現場を訪れては取材を続けており、ホームレスへの取材も彼のライフワークと呼べるものの1つです。

本書は2020年に出版された本であり、令和における最新のホームレスの実態をルポした作品です。

私がかつて東京を訪れたときに驚いた光景の1つが、ホームレスの人たちの多さです。

新宿西口地下道に並んだ段ボールハウスや新宿中央公園や宮下公園に並ぶ本格的な小屋、さらには街中にもホームレスを多く見かけました。

そして実際に見かけるだけではなく、お金のない学生時代は彼らが100円で販売しているマンガ週刊誌をたびたび購入し、社会人になってからも彼らが販売するストリートペーパー「ビッグイシュー」を定期的に購入していた時期がありました。

一方でここ数年でかつて見かけた段ボールハウスや小屋は姿を消し、時たまガード下で寝ているホームレスを見る程度で、街中で彼らを見かける頻度が極端に減少した実感があります。

一見するとホームレスが減ったことは町の景観や治安、衛生面で良いことのように思えますが、そこへ至るまでの過程、そしてそうした政策に問題はなかったという視点についても本書は言及しています。

かつて多くのホームレスの輩出する供給元となっていたのが、東京の山谷、横浜の寿町、そして大阪の西成に代表されるドヤ街であり、ここはおもに建設業に従事する日雇い労働者たちが暮らしている町でした。

こうした町へも定期的に訪れて取材を続けてきた著者だけに、最新の情報含めてその遍歴についても具体的に言及しています。

ホームレスへの取材を20年以上続けてきた著者だけに、彼らの暮らしへ起きた変化が具体的で分かりやすく描写されており、社会的な問題提起の内容も適切であるように思えました。

本書を読んで、私の中のホームレスたちへの印象、そして暮らしについての情報がかなりアップデートできました。

新書としてはすこし長めの300ページ近い分量でホームレスに関する統計情報が豊富に掲載されていることもあり、かなり読み応えのある社会派な1冊になっています。