レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

生き方―人間として一番大切なこと

生き方―人間として一番大切なこと

京セラKDDIを創業したことで知られる、日本を代表する経営者である稲盛和夫氏による著書。

タイトルにある通りマネジメント本ではなく、広く社会人向けに書かれた自らの経験を元にした哲学本といった感じです。

ただし実際には誰にでも分かり易い表現で書いてあり、その内容を一言で表すと下記の言葉に集約されると思います。


「人生・仕事の結果 = 考え方 × 熱意 × 能力」


"熱意"は好きなことに没頭すれば誰にでも持つことがでる要素であり、"能力"は個人差が入る余地があります。
そこで著者は"考え方"こそが一番大事な要素だと主張しています。


なぜなら"考え方"の要素のみは、数字がマイナスに振れることがあり、"いい考え"があれば、"悪い考え"もあり、能力があっても間違った方向にそれを使えば、犯罪になりかねないというものです。


それだけに良い方向へ考え方を導くために心を磨く重要さに紙面を裂いて説明をしています。

最も成功した経営者の1人でありながら、「善行を行い他を利する」という考え方を最優先にし、会社経営の判断に迷ったときは、「人間として何が正しいのか」というシンプルなポイントを判断基準にしたという、若い経営者からは決して聞かれない内容ばかりです。

どんな形にせよ、「働く」ということは「生きる」ことの一部であるのは事実であり、巷には様々なマネジメント手法が生まれては消えてゆきますが、本当に大切なことは実にシンプルです。

ただシンプルが故に継続して実践するのは難しく、日々を「ただ何となく生きてゆく」でなく「いかに真剣に生きてゆく」ことが大切であるかと同時に、まだまだ自分が未熟なことに気付かせてくれます。


経営やビジネスの分野に限定しても、世の中にはネットや本を通じて多くの情報で溢れかえっていますが、そういった情報に流され、そして疲れたと感じているビジネスマンにじっくり読んでもらいたい1冊です。

著者は鹿児島県出身であり、同郷の西郷隆盛を尊敬する1人として挙げていますが、彼の座右の銘である「敬天愛人」にも通じる考え方は、時代や世代を超えた響きがあります。