レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

勝負師と冒険家―常識にとらわれない「問題解決」のヒント

勝負師と冒険家―常識にとらわれない「問題解決」のヒント

ヨットレースで有名な日本を代表する海洋冒険家である白石康次郎氏と、同じく日本を代表する棋士である羽生善治氏の対談をまとめた1冊です。

白石はヨットによる無寄港での単独世界一周の世界最年少記録を樹立するなどの実績を残しており、一方で羽生は将棋という競争の厳しい世界の中で、長年に渡りNo1の勝率を誇っています。

本書は肉体派と頭脳派という異色の対談の中で、一見すると全く違う2つの勝負の世界から共通点を探るように展開されてゆきます。


2人とも順調に思える過去の道のりにおいては、何度も失敗を経験しており、若さや勢いに身を任せることが少なくなったという部分は理解し易いですが、本当に厳しい局面では、蓄積した知識と技術に基づく独自のノウハウよりも、自らの経験や勘を大切するというのは参考になります。


状況に応じて、自由自在に自分の引き出しを開ける能力は、単純にベテランであるからという理由ではなく、今の立場に安住すること無く、常に新しいチャレンジに挑戦してゆき、新しい経験を吸収する姿勢が必要になります。


それと同時に技術が日々進歩してゆき、新しいルールが生まれてゆく中で、自ら変化してゆく適応能力が求められます。


これは一般の社会人にも通じるところがあり、例えば会社や特定の業界の中で一定の地位を築きながらも、その立場に安住することなく、新しい可能性を模索し続ける姿勢は年齢に関係無く自分をより成長させる原動力になり得ることだと思います。


その一方で変わっていけないもの、苦しいときも自分を信じて進む姿勢初心の頃の素直さが土台に無いと、勝敗ギリギリの場面での粘り強さに欠けてしまうことも指摘しています。


本書は真剣な勝負論に終始することなく、雑談も交えながらリラックスした雰囲気の中で行われている対談ということもあり、気楽に読める1冊になっています。