レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

シューカツ!

シューカツ! (文春文庫)

タイトルにある通り、大学生たちの就職活動をテーマに描いた小説です。

主人公の水越千晴を中心に大学生たちがプロジェクトチームを結成し、最も難関と言われるマスコミへの就職を目指すところから物語が始まります。

生涯の職業が決まるかも知れない"シューカツ"には、受験と違った独特の緊張感があります。

そんな大学生たちの喜怒哀楽を描いた小説であり、舞台は2006年~2007年あたりに設定されていると思われます。


私自身は就職氷河期真っ只中ということもあり、卒業寸前に滑り込みで小さな会社に就職したこともあって感情移入は難しい部分がありましたが、学生たちの不安と期待が入り混じった複雑な心理状態は理解できます。

著者は本作品を書くにあたってマスコミ業界の新卒採用を詳細に取材したのかは分かりませんが、描写は詳細に渡っており、マスコミの採用試験を知らない私にも説得力のある内容でした。


もちろん小説のための演出もあるでしょうが、本書はシューカツのためのマニュアル本ではなく、あくまでもシューカツを背景にした若者たちの青春小説ですので、本当の意味で現実を反映したものである必要はないと思います。


下北サンデーズ 」を読んだときにも感じたことですが、石田衣良氏の青春小説を書く腕は確かであり、さらに最後まで一気に読めてしまうテンポのよさがあり、読了後は爽やかな印象を与えてくれます。


続けて同氏の作品を読んでしまうと少し食傷気味になってしまうと思いますが、半年に1作品くらいのペースで気分転換をしたい時に読んでみたくなる作家です。