愛国論
ジャーナリスト・田原総一朗氏と作家・百田尚樹氏の対談を1冊の本にまとめたものです。
どちらも各分野で著名な人物ですが、こうした対談本はテーマこそあれど、本質的にはTVやラジオの対談と変わらないため、ストーリーを気にせずサクサク読むことができます。
ちなみに本対談は、田原氏が百田氏に呼びかけるという形で実現したものです。
はじめは百田氏の小説「永遠の0」の執筆背景といった無難な話題から入ってゆき、大東亜戦争の歴史的な捉え方、敗戦からGHQ占領下で日本人に植え付けられた自虐史観、つまり日本の侵略戦争が多くの罪を犯したという贖罪意識が社会全体へ及ぼした影響という大きなテーマに入ってゆきます。
後半に入ると、時事的な隣国(韓国、中国)との関係、朝日新聞に代表されるマスメディアの問題に言及してゆき、そして最後に「愛国論」で対談が締めくくられます。
対談本によってその人物の意外な一面を知ることもありますが、本書に登場する2人はメディアに頻繁に登場していることもあり、そのイメージが大きくが変わることはなく、それぞれの立場や信条に沿っての対談に終始しているようです。
つまり田原氏はジャーナリストらしく、時には自分の主張を押し出すことはあっても、基本的には対談のリード役ということもあり、比較的視野の広い発言で終始している一方、百田氏は作家らしく個性を全面的に押し出した発言が目立ちます。
よってお互いが意気投合するタイプの対談ではありませんが、かといって激しく論争を繰り広げるタイプの対談でもありません。
お互いの意見の相違を受け入れた上で淡々と進行してゆく部分が紙面の関係があるとは言え、すこし中途半端な印象になってしまったのは否めません。
それでも韓国の反日運動について「韓国併合以後に善意でやったことが全部、裏目に出た」、中国との尖閣諸島の領有問題については「ダラダラと交渉していればいい」といったような、テレビや新聞といったメディアではお目にかかれない部分で両者の意見が一致するなど、興味深い部分もあります。
各分野の第一線で活躍する2人の対談という意味では話題性もあり、彼らが歴史認識や時事問題をどのように捉えているのかを知るのに最適な本だといえます。