プロ野球の名脇役
多くのプロ野球選手の中でもスターやエースと呼ばれる選手のプレーは我々を驚かせますが、野球はチームスで成り立っているポーツです。
そして野球を注意深く見てゆくとスター選手ほど目立たなくとも、メディアに取り上げられる機会が少なくとも、チームの勝利のために貢献する選手たちの存在に気付くはずです。
そんな彼らの活躍を応援するのがプロ野球の醍醐味だと思います。
本書は「プロ野球の職人たち」の続編として、スポーツライターの二宮清純氏が、脇役たちの物語に光を当てた1冊です。
引退して間もない選手もいれば王長嶋時代に現役だった選手も含めて、幅広い年代から著者がこだわったメンバーを選んでいるように感じます。
またスタッフ編としてコーチやスコアラー、打撃投手にもスポットを当てている点は注目です。
【野手編】
- 田口 壮
- 大熊 忠義
- 辻 発彦
- 末次 利光
- 緒方 耕一
- 井端 弘和
【バッテリー編】
- 谷繁 元信
- 斎藤 隆
- 大野 豊
- 遠山 奬志
【スタッフ編】
- 伊原 春樹
- 掛布 雅之
- 伊勢 孝夫
- 北野 明仁
- 山口 重幸
"名脇役"だけあって有名な選手が多いですが、その中でも比較的知られていない選手の中では、日本プロ野球で最高の1番バッターと言われた福本豊を2番打者として支えた大熊忠義です。
彼は福本の盗塁をアシストするためにファウル打ちの技術を身につけ、自分の打率を大幅に下げてまで役割に徹しました。
また元阪神の遠山奬志投手は投手として伸び悩んでいる時期に野村監督から、左バッターのインコースを徹底的に攻める役割を与えられ、ワンポイントリリーフとして存在感を示しました。
元巨人の松井秀喜をして「顔を見るのも嫌だ」と言わしめたのは、最高の褒め言葉に他なりません。
野球のタイトルを獲ることは選手にとって大事ですが、だからといって4番バッターを9人並べても勝てないのが野球です。
たとえ目立たぬ役割であっても取り換えのきかない唯一無二の存在として貢献する人材の必要性は、プロ野球にかぎらず重要なことなのです。