傷つきやすくなった世界で
本書はフリーペーパー「R25」の誌上での石田衣良氏の連載エッセイ「空は、今日も、青いか?」を文庫化したものです。
「R25」といえばリクルート社が創刊した20代、30代前半の読者をターゲットとしたフリーペーパーであり、当時は私自身もターゲット層だったということもあり何度か手にとった記憶があります。
エッセイといえば作家自身の何気ない日常の出来事や、時事ニュース、仕事や趣味について自由に綴ってゆくスタイルですが、本書では連載当時40代半ばだった石田氏が若い世代へ意識して語りかけるスタイルで執筆されています。
もし読者の親世代の大御所作家がエッセイを連載するとなると、読者(若者)との距離が開き過ぎてしまい、内容も説教や教訓めいたものになりがちになることが予想されます。
また同世代となると、年齢的に実績のある作家がほとんどいません。
その点で石田氏は、少し歳の離れた若者に理解のあるお兄さんという立ち位置で、実績も申し分ない人選であるといえます。
本書に収められているのは2006年から2008年にかけてのエッセイですが、おもに話題にしている内容を取り上げてみます。
- 臆病にならずに積極的に異性と交際しよう!
- 日本人は働き過ぎ。自分にとっての生きがいを大切にしよう!
- 選挙へ行って政治を良い方向へ変えてゆこう!
- ネットの情報だけでなく、自分で考えることが大事
- 格差や差別を無くしてゆこう!
10年以上前に執筆された内容ですが、今でも話題として取り上げても不思議でないものばかりです。
暗い事件や重いテーマを取り上げる回もありますが、作者の姿勢や結論はどれもポジティブであり、一貫して世の中を嘆いて諦めるより、少しずつでも良くしゆく努力を続けることの重要性を訴えている点は、まさに若者向けといえます。
どんなに時代が変わっても若者たちはつねに前を向いて自分の道を歩んでほしい、そんな作者の希望と応援が詰まったエッセイに仕上がっています。
私自身はもうR25世代ではありませんが、このエッセイからは元気をもらえる気がします。