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ユーモアは最強の武器である



「仕事は真剣勝負の場であって笑い声は慎むべきである」といった考えは遠い過去のものとなりつつあります。

私語がまったく聞こえず全員が気難しい顔をして仕事をしている職場は、ストレスで溢れているようであり、そうした重苦しい雰囲気の会社では働きたくないと思ってしまいます。

もちろん真剣に仕事に取り組む姿勢は大切です。
著者の1人は周囲から「仕事人間」と思われていましたが、あるきっかけでユーモアの持つ可能性に気づき、専門的な研究を始めたことが本書の生まれるきかっけとなりました。

つまり本書はユーモアが人びとのモチベーションや意思決定、心身の健康にどのように影響するか、さらに有意義な影響をもたらすためにユーモアをどのように活躍できるかといったテーマで執筆されており、スタンフォード大学ビジネススクールでこうした授業が創設されるに至ります。

本書の目次は以下の通りです。
  • 第1章 ユーモアの4つのタイプ
  • 第2章 ユーモアの脳科学
  • 第3章 プロのコメディアンのテクニック
  • 第4章 ユーモアを仕事に活かす
  • 第5章 ユーモアとリーダーシップ
  • 第6章 職場で陽気な文化をつくる
  • 第7章 ユーモアのグレーゾーンを切り抜ける
  • 第7.5章 ユーモアは人生の秘密兵器

重大な意思決定を下したり、難しい交渉を迎えた会議室での重苦しい空気、トラブルが発生し深刻な雰囲気が流れる現場など、これらに共通するのはそこにいる人間たちが緊張し、心の余裕がまったくない状態です。

しかしユーモアはそうした雰囲気を一変させたり、相手と打ち解け信頼感が生まれたり、時には創造力を高める力を持っていることが研究によって明らかになっています。

ときには職場にユーモア(笑い)が必要という意見には殆どの人が同意すると思いますが、本書ではそれを積極的に取り入れることを推奨しています。

一方で場違いで相手に嫌な思いをさせるユーモアは和らげようとした雰囲気をより一層悪くしたり、おやじギャグで場を白けさせてしまう危険性があります。


目次から分かる通り、本書ではプロのコメディアンを参考にしたり、グレーゾーンの見分け方にも言及しており、適切なユーモアを取り入れるための参考となります。

そういえば日本の政治家の失言には配慮のない不適切なユーモアに関連するものが多く、本書を活用すべきかも知れません。

本書の主題は先ほど説明した通りユーモアをビジネスで活用する方法ですが、ユーモアの持つ真の効能はビジネスに留まらず、人生そのものを幸福にするほどのパワーを秘めているのです。

世界的に日本人は勤勉という評価を受けていますが、それを裏返すと日本人はユーモアが下手、もしくは通じないという印象が潜んでいるような気がします。

人生を楽しく過ごすためにもユーモアや冗談を言える余裕くらいはいつも持っておきたいものです。