日本のいちばん長い夏
著者の半藤一利氏には「日本のいちばん長い日」という、終戦(1945年8月15日)の前後を描いたノンフィクション作品があり、2度の映画化、マンガ作品も出版されていることから分かる通り、名著として知られています。
本書は「日本のいちばん長い日」の別冊のような位置付けであり、作品の目玉は分量の3分の2を占める昭和38年6月20日に料亭「なだ万」で行われた座談会の収録です。
座談会には30人もの大人数が参加していますが、一斉に発言すると収集がつかなくなるため、会食しながら著者が司会進行を務める形で開催されたようです。
座談会に参加したメンバー以下の通りです。
カッコ内は終戦当時の肩書や終戦を迎えた場所などです。
- 迫水 久常(内閣書記長官 ※現在の官房長官)
- 吉竹 信(朝日新聞記者)
- 有馬 頼義(作家)
- 篠田 英之助(海軍兵学校生徒)
- 富岡 定俊(奮励部作戦部長 少将)
- 松本 俊一(外務次官)
- 今村 均(陸軍大将)
- 佐藤 尚武(駐ソ連大使)
- 荒尾 興功(陸軍省課長)
- 酒巻 和男(海軍少尉 アメリカで捕虜)
- ルイス・ブッシュ(イギリス軍人 大森の収容所)
- 大岡 昇平(レイテ島で捕虜)
- 鈴木 一(鈴木貫太郎の秘書官)
- 館野 守男(日米開戦を伝えたアナウンサー)
- 池田 純久(関東軍参謀副長)
- 江上 波夫(考古学者)
- 扇谷 正造(陸軍一等兵・在中支)
- 岡部 冬彦(新兵・セブ島)
- 岡本 季正(外交官・スウェーデン公使)
- 徳川 夢声(作家)
- 南部 伸清(海軍少佐 潜水艦艦長)
- 入江 相政(天皇侍從)
- 吉田 茂(待命大使)
- 町村 金五(警視総監)
- 会田 雄次(一等兵 ビルマで捕虜)
- 池部 良(少尉 ハルマヘラ島)
- 上山 春平(人間魚雷・回天生き残り)
- 村上 兵衛(陸軍士官学校教官)
- 楠 政子(白梅隊 沖縄)
- 志賀 義雄(共産党員として獄中)
陸軍大将から天皇側近、特攻隊員や異国の地へ送られた一兵卒、さらに市井の人や収容所にいた人など、よくこれだけ多彩で豪華なメンバーを集めることができたなというのが感想です。
それぞれの立場から戦争そして敗戦をどのように感じたのか、当然のように違った視点が見えてきます。
戦中であれば決して交わらなかったであろう人たちが、終戦から15年以上を経て一同に会して当時を振り返るという貴重な場面を文章を通じて知ることができるのは、読書の醍醐味であるといえます。