今まで紹介してきた本は900冊以上。
ジャンル問わず気の向くまま読書しています。

YOUR TIME



4063の科学データで導き出した、あなたの人生を変える最後の時間術
これが副タイトルです。

つまりすこし大きめの書店へ行けば必ず何種類かは置いてある、仕事の効率を高めるためのタイムマネジメントの本です。

現在はインターネットの普及と技術の向上により、膨大な量の情報へ手軽にアクセスできるようになりました。

一方で我々の生活を効率的にして豊かにしてくれるはずのテクノロジーの進化は、私たちに余暇をもたらすどころか、ますます時間の流れを早く感じさせ、以前よりもより忙しくなっているような気さえします。

私もその1人であり、仕事では時間を無駄にせず合理的かつ効率的にタスクをこなすよう意識しながらToDoリストなどを駆使しています。

そしてより良い方法があるかも知れないと思い、わずかな望みを抱きながら一番目立つ場所にあった本書を手に取ったのです。

しかし本書では冒頭で時間術(タイムマネジメント)に関する3つの真実を提示しています。

  • 真実1 時間術を駆使しても仕事のパフォーマンスはさほど上がらない
  • 真実2 時間の効率を意識するほど作業の効率は下がってしまう
  • 真実3 時間をマネジメントするという発想の根本に無理がある

私自身は自分の使っているタイムマネジメントの方法で効果が出ていると実感していたため、そんな馬鹿なとは思いましたが、多くの科学実験の統計により明らかになっている事実であるということです。

そして本書では、その理由を人間の脳の仕組みや実験データから明らかにしています。

つまり万人に効果のある時間術はこの世には存在しなということを前提に、以下2つの要素から個人差に合った時間術を適用することを提唱しています。

  • 未来=いまの状態の次に起きる確率が高い変化を、脳が「予期」したもの
  • 過去=いまの状態の前に発生した確率が高い変化を、脳が「想起」したもの

こう書くと少し分かりにくいですが、要は個人によって未来と過去の解釈の程度には違い(ズレ)があるため、その傾向によって最適な時間術を選択するためのフレームワークを提唱しています。

さらには本書の後半では、「効率化から解き放たれる」、「退屈を追い求める」といった時間術とは一見矛盾するような内容を紹介しています。

つまり時間術を駆使すればするほど新たなタスクが発生し、それによって常に時間に追われる焦燥感を抱き、結果的に人生にとって大切なものを失いかねないと警告しているのです。

結論を言えば本書は「○○○という方法を使えば、仕事の効率が2倍になる」といった類の本ではありません。

一方で時間に対する現代人の捉え方とその問題点を指摘する部分は示唆に富み、効率を求め過ぎるがゆえに陥りやすいワナに気づかせてくれる1冊なのです。