レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

アルサラスの贖罪〈2〉女王と軍人

アルサラスの贖罪〈2〉女王と軍人 (ハヤカワ文庫FT)

引き続き「アルサラスの贖罪」の第2巻のレビューです。

主人公アルサラスは、女神ドウェイア扮する黒猫と一緒に虚無の神ディヴァに対抗するために、世界中を巡って共に戦う仲間を探索します。

そして優秀な戦士である"エリア"、都市国家を統治する女性領主の"アンディーヌ"、敬虔な神官の"ベイド"、天才的な頭脳を持つ孤児の"ゲール"、他人の心を読み取る特殊な能力を持つ"レイサ"といった個性豊かな人物が仲間に加わります。

一方で虚無の神であるディヴァの陣営にも様々な能力を持ったアルサラスの宿敵"ゲンド"を中心とした勢力が集結し、戦いの舞台は国家間を巻き込んだ戦争へと発展します。

それぞれの信じる神の陣営に属した国家間が戦争を行うといった設定は、ファンタジー小説では全く珍しくありませんが、この作品の一番の特徴は、時間と場所を超越できる<ドア>が存在することです。

<ドア>は望む時間と場所へ瞬時に移動することができ、個人だけでなく軍隊でさえも<ドア>を使用することが可能です。

こういった強力なアイテムを登場させると、物語のバランスを取るのが難しくなるのが普通ですが、<ドア>自体を出現させる能力を持ったキャラクターを限定させることと、敵味方両方に<ドア>を使える能力者を登場させることでバランスをうまくとります。


また相手の心を読み取る能力者も敵味方に存在するため、剣と魔法の戦いというよりも、お互いの戦略や謀略を駆使した、頭脳戦のような戦いが繰り広げられます。


緊迫する状況の中でも登場するキャラクターがどこか楽観的であり、またユーモアのセンス溢れる会話が物語全体を和ませている印象を受けます。



純粋なファンタジー小説を期待している読者にとっては、期待を裏切られる人もいると思いますが、ファンタジー世界を舞台としたSFっぽい小説として読むと、結構楽しめると思います。


最後まで展開が気になり、知らずのうちに最終巻(3巻)を手に取ってしまう面白いストーリーに仕上がっていると思います。