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播磨灘物語(3)

新装版 播磨灘物語(3) (講談社文庫)

天正6年(1578年)。
摂津を統治していた荒木村重が毛利家、本願寺の一向宗門徒と結び、突如、織田信長へ反旗を翻します。

この村重の裏切りは、まだ中央での支配を確立する過程にあった信長にとって大きな衝撃でした。

摂津の隣にある播磨の豪族たちも、この出来事をきかっけに一斉に毛利方へなびいたことからも影響力の大きさが分かります。

当然のように織田家に良い感情を持っていなかった黒田官兵衛の主人・小寺藤兵衛も毛利へ味方することを密かに決意します。

ここで官兵衛は人生最大の危機を迎えることになります。

荒木村重と面識のある官兵衛は、単身で村重の説得に向かうことを決意します。

一方で彼の主人・藤兵衛は村重へ密使を出し、説得へ赴いた官兵衛の殺害を依頼します。

つまり官兵衛は家臣の立場にありながら、完全に主人から見放されてしまうのです。

さすがに村重は知古である官兵衛を殺害することはせず、牢獄へ閉じ込めることにします。

さらに悪いことは重なり、村重の説得から戻らない官兵衛が荒木方へ裏切ったと見なし、信長は人質として預かっている彼の嫡子(後の長政)を殺害するように命じます。

すべての背景を正確に把握した秀吉の軍師・竹中半兵衛の機転によって嫡子は無事に匿われますが、後の官兵衛からすれば信じられないほど軽率な行動だったといえます。

当時の牢獄は吹きさらしの環境で、栄養も衛生面もまったく考慮されない狭い空間でした。

つまり監禁のための施設というより、投獄された人間を衰弱死させることを目的としたものでした。

そこで官兵衛は1年以上にわたり拘束され続けることになります。

やがて城主である荒木村重が逃亡し、伊丹城から救い出された官兵衛は、肉は削げ落ち、関節は動かなくなり、皮膚病によって頭髪が抜け落ちた壮絶な姿に変わり果てていました。

官兵衛にとっては災難としか言えない出来事でしたが、この時の体験が官兵衛を生まれ変わらせ、戦乱の時代へ大きく羽ばたくきっかけとなったのは間違いありません。