レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

新島八重の維新



新島八重にはじめて興味を持ったのは4年ほど前です。
それは家族旅行で会津を訪れ、白虎隊士が自決した最期の場所であり、また彼らの墓(白虎隊十九士の墓)があることで有名な観光スポット、飯盛山を訪れた時です。

白虎隊の墓へ向かうために石段を登ってゆく途中で私設の資料館(白虎隊記念館)が目に入り、ついでにふらっと入ってゆくと、新島八重にまつわる展示品と彼女の略歴が紹介されている一角を見つけました。

当時は新島八重が2013年の大河ドラマに選ばれた直後ということもあり、資料館としても白虎隊に縁の深い彼女を特設ブースで紹介していたのです。

あいにく大河ドラマには興味が無いため、「八重の桜」を見ることはありませんでしたが、紹介されていた彼女の略歴でひときわ目を引くものがありました。

それは彼女が20代前半の時に、戊辰戦争における鶴ケ城籠城戦に加わり、1ヶ月間にわたり官軍相手に奮戦したというものです。

言うまでもなく鶴ケ城を本拠地とする会津藩は、佐幕(幕府側)のシンボルともいえる大藩であると同時に、その悲劇的な運命でも有名です。

彼女の旧姓は山本であり、代々会津藩砲術指南役を務めてきた家柄に生まれたのです。

いくら武士の娘といはいえ、断髪して銃を担いて入城し砲撃戦に加わるという気概は並大抵のものではなく、その男まさりの激しい気性が近代化してゆく明治の時代になっても発揮され、理解ある夫・新島襄と出会うに至って、当時の女性としては先進的な存在として後世で有名になるのです。

著者の安藤優一郎氏は学者ということもあり、本書は歴史小説としてではなく、あくまでも当時の時代背景を丁寧に解説しながら彼女の生涯を迫っています。

今では女性経営者や管理職が珍しくない時代ですが、当時は彼女の立ち振舞、発言、服装が多くの賛否両論(どちらかといえば批判の方が多かったようです)が巻き起こりますが、それを"昔の日本人の感覚"として片付けるのではなく、やはり彼女が生きた時代を知ってこそ理解力が深まります。

そこからには、"同志社大学を創立した新島襄の妻"としてではなくその前半生を"武士の世"の中で過ごし、まだまだ女性へ対する保守的な概念が強かった明治時代において自立して生きた女性・新島八重の人生がハッキリと見えてくるのです。