レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

「意識高い系」という病



ネットスラングにそれほど詳しくない私でも「意識高い系」というワードはたびたび目にする機会があります。
一見すると褒め言葉のようですが、文脈から皮肉を込めたネガティブな意味で使われる機会が多いことは私でも知っています。

著者の常見陽平氏の言葉を要約すると次のようになります。
社会問題に対する関心が高い、勉強熱心、積極的で交流好き。
ただし自分の実力以上に自己アピールしたがる残念な人たち。

確かに残念な人であり、この「意識高い系」というネットスラングは、2009年頃から本格的に使われるようになったようです。

本書では、こうした「意識高い系」の人びとの生態系(?)を明らかにしつつ、彼らを誕生させる土壌を作った「自分磨き」メディアの存在、そして彼らの発言力を広める原動力となったFacebookTwitterをはじめとしたソーシャルメディアの影響力を解説しつつ、最終的には情報との正しい向き合い方を提言しています。

私自身、「意識高い系」というタイトルに惹かれて好奇心で本書を手にとったものの、実際に扱っているテーマはかなり大きなものです。
「意識高い系」というテーマから入り、読者にネットリテラシーを啓蒙する本と言ってよいかも知れません。

政治、芸能に限らず、ほぼすべてのジャンルのニュースがネットで話題にされない日はありません。そしてそこでは行き過ぎた誹謗中傷というのがつきものです。

本書は2012年に出版されていますが、変化が早いと言われるネットの世界においても本書で紹介されているような状況は殆ど変化がないように思えます。

つまりネットリテラシーを掲げたところで、人間はいきなり賢くはなれないのです。
それは異種交流会、勉強会を何度か経験して、いきなり自分が優秀になったと錯覚している「意識高い系」の人たちとまったく同じことです。

常見氏が指摘しているように、いきなり優秀になれる方法はありません。
地に足をつけて目の前の現実(仕事や家族)に丁寧に対処してゆくしかないという点もその通りだと思います。

ネットの話題を取り扱った本にも関わらず10年近く経過しても内容が陳腐化していないため、今でも一読の価値がある本であるといえます。