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ジャンル問わず気の向くまま読書しています。

プロ野球「人生の選択」



毎年約100人の新たなプロ野球選手が生まれ、ほぼ同じ数だけの選手が去ってゆきます。

毎年10月に入るとペナントレースが終わり、ドラフト会議戦力外通告がファンたちの話題を賑わせます。
ただ今年はコロナの影響で夏の甲子園大会が開催されなかった影響もあり、少し盛り上がりに欠けてしまったのは残念です。

プロ野球選手にとって入団、退団といったイベントもそうですが、本書ではスポーツライターの二宮清純氏がプロ野球選手にとっての人生の岐路となった場面にスポットを当ててコラム風に紹介しています。

野茂英雄やイチロー、松井秀喜らがメジャーリーグに挑戦したエピソードが本書で紹介されますが、個人的にはスター選手のエピソードよりも、厳しいプロ野球の世界で生き抜くために奮闘してきた選手のエピソードの方に興味を惹かれます。

分りやすい例でいえば、主にオリックスで活躍して176勝を挙げた星野伸之投手が当てはまります。
彼は高校卒業後にドラフト5位で入団しますが、そこで自分の球速がプロ1軍のレベルにないことを悟ります。

そこで星野投手の下した決断は、剛速球を身に付ける努力ではなく、スローボールに磨きをかけるというものでした。

遅いボールで打者のタイミングを外すためのフォームと正確なコントロールを武器として身に付け、最速でも120キロ後半のボールで厳しいプロ野球の世界で活躍し続けたのです。

また本書では大リーグで活躍した選手も紹介されています。
私は本書で初めて知りましたが、ジャイアンツに在籍していたバリー・ボンズは、MLB歴代1位記録となる通算762本塁打で知られる偉大なバッターですが、彼が本塁打を量産するようになったのはキャリアの後半になってからであり、それまでは走攻守揃ったアベレージヒッターとして活躍していました。

しかし年齢の影響で走力の衰えを自覚するようになると肉体改造やフォーム改造を行い、走力が不要となる正真正銘のホームランバッターとして生まれ変わったのです。

よくホームランバッターは天性のものと言われますが、ボンズはその常識を自らの努力で覆したのです。

後半は日本プロ野球へ対する提言コラムという形がメインとなり、内容がタイトルと少し離れてゆきますが、それでも本書が出版された2003年当時の日本プロ野球を懐かしみながら読むことができました。