レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

語彙力こそが教養である



主張したいことがシンプルに伝わってくるタイトルです。

著者の齋藤孝氏は、大学で教鞭をとる教育学者ですが、普段あまりテレビを見ない私でも何度か出演している姿を見かけたことがあります。

学生へ何よりも読書の重要性を一貫して訴えていますが、読書好きの私からすればまったく反対する理由はありません。

多くの学生を見てきた著者は、1分間でも学生のプレゼンを聞けば、その人が持っている語彙や言葉の密度が手に取るように分かると言います。

本書では語彙の豊富さは知性に直結するという確信を持っている著者が、語彙が貧困な学生や社会人が増えている現状を危惧し、語彙力を鍛えるためのインプットとアウトプットの方法を紹介した1冊です。

まず初めはインプットが重要になりますが、やはりその一番の近道は読書であるというのが著者の考えです。
その他にもテレビや映画、インターネットでも語彙のインプットが出来ると紹介している点は、読書離れしている人たちの敷居を少しでも下げようという作者なりの工夫が伺えます。

それでも総じて言えば、古典に属する名著を読むというのがもっとも効率的なようです。

本書に挙げられている一例として夏目漱石、幸田露伴、三遊亭圓朝、孔子、ドストエフスキー、シェイクスピアなどです。

たしかにここに挙げられている文章は格調が高かったり、表現が多様であったり、ことわざや有名な言葉の宝庫です。

私自身の経験からは、年配の人の方が語彙力が豊かな傾向がある気がしますが、確かにそこには人生経験のほかに読んできた本の数の差もあるような気がします。

そして著者のように1分間のプレゼンではとても無理ですが、私でも初対面の人とある程度会話することが出来れば、おおよそ相手の育ちが分かってしまうものです。

悪い意味に受け取って欲しくありませんが、ここで言う「育ち」とは、生まれた家庭環境や貧富の度合いを指すわけでなく、単純に教養のレベルのことです。

私も著者のように語彙力のもっとも効率的な鍛え方は読書であるという考えには賛成であり、図書館や古本屋で気軽に本を読むことのできる現代において、読書量と貧富の差は関係ありません。

ただ個人的に言わせてもらえれば、本書で紹介されている語彙力のアウトプット例については、多少フォーマルな場面でもない限り、さりげなくであっても会話の中に四文字熟語や故事を入れるのは少々難しい(=場違い)と感じた点です。

ちなみにビジネスの場面において横文字を多用する人がいますが、これは語彙力とは違う気がします。
なるべく多様な表現や例えなどを用いて相手に分りやすく伝えることが語彙力だと思うからです。