レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

修羅場の極意



本書は2013~2014年の間に月刊誌「中央公論」で連載されていた佐藤優氏の「修羅場の作法」を新書化したものです。

ちなみにタイトルにある"修羅場"とは、継続的に闘争が起きている場所を指すそうです。

著者にとっての修羅場は何といっても、鈴木宗男事件に連座する形で背任容疑で逮捕され、東京拘置所で512日もの期間にわたり勾留された経験が該当しますが、著者は序文で次のように述べています。
外交と政治の修羅場で、自分はどこで間違ったかについて、真剣に考えた。 そのときの気持ちにもう一度帰りながら、修羅場の作法に関し、考察したい。

もちろん"修羅場"の定義は人それぞれであり、著者のような修羅場を経験している人は少ないと思いますが、ひょっとしたら著者以上の修羅場を経験した人もいるかも知れません。

ちなみに本書で語られている修羅場における作法は、学生やサラリーマンとして、あるいは家族や友人とのトラブルが"修羅場"に該当する人にとっては少しそぐわないかも知れません。

なぜなら例に挙げられている人物たちがいずれも歴史の教科書に載る人物ばかりだからです。

一例として言及されているのはキリスト、マキャベリ、ドストエフスキー、ヒトラーとった感じあり、ほとんどの読者にとって実感を伴わない例が挙げられているからです。

つまり実生活におけるトラブル対処の実用書としてはほとんど役に立たないのですが、読み始める前から著者が佐藤優氏という時点である程度は予想できていました。

結論を言えば本書は"修羅場の作法"というテーマに沿って書かれたエッセイであり、歴史上の出来事、著者が専門とする(プロテスタント)神学からの視点、あるいは著者がかつて外務省職員として従事したインテリジェンスの視点からの考え方を読者へ伝えている1冊なのです。

著者の作家としての魅力を各所で味わうことのできる1冊であり、大きな視点でいえば先行きの不安な世界情勢、身近なものであれば自分自身の人生やキャリアを思考する上でのヒントが本書から"見つかるかも"といった程度の期待感で読む、もしくは単純な知的好奇心で読むことをおすすめします。