レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

青雲士魂録


約250ページの文庫本に津本陽氏の短編が12篇収められています。

津本陽といえば剣豪小説というイメージがありますが、本書では剣豪以外にも鉄砲や弓矢の名手、さらには主人公が剛力の持主や大名だったりする作品などもあり、バラエティに富んでいます。

以下が収録されている作品のタイトルと主人公です。

・淀の川舟
示現流の使い手である無名の薩摩藩武士

・睡り猫
伊藤典膳忠也(一刀流三世当主)

・御付家老
安藤帯刀直次(紀州藩初代家老)

・一矢参らすべし
別所山城守吉親の妻(大太刀の使い手)

・三年坂の決闘
宮本孫兵衛(雑賀衆の鉄砲名人)

・広隆昔語り
九鬼広隆(紀州藩御旗奉行)

・黒熊武兵衛
猪瀬庄兵衛(下妻の庄屋)

・佐武伊賀守 功名書き
佐武義昌(雑賀衆、のちに浅野幸長に仕える)

・炎の軍法
島津義弘

・剛力伝
吉田金平資清(紀州藩の侍)

・家康伊賀越え
徳川家康

・公事宿新左
大橋新左衛門(新陰流の使い手で深谷宿の公事方)

著者の出身が和歌山市ということもあり、うち5作品が紀州にゆかりのある物語ですが、全作品に共通するのは一世一代の危機に陥った主人公がどのようにして窮地を脱したのかをテーマにしています。

緊迫感のある作品が次々と読める贅沢な1冊であり、津本陽氏のファンであれば是非とも抑えておきたい1冊です。