レビュー本が1000冊を突破しました。
引き続きジャンルを問わず読んだ本をマイペースで紹介してゆきます。

いま中国人は中国をこう見る


2025年11月に高市総理による台湾有事に関連した発言(いわゆる高市発言)を受けて中国政府は即座に反応し、強い批判を繰り返すとともに、国民への訪日自粛の呼びかけ、輸出入規制といった報復措置に踏み切りました。

かねてより中国共産党(なかでもとくに習近平政権)にとって台湾統一は"核心的利益中の核心"であることを公言しており、すこし注意深く考えれば高市発言の反応としては当然であり、中国政府の姿勢や態度は終始一貫していて分かりやすいという見方ができます。

一方で中国国民たちがどのような考えを抱いているかについては徹底した監視社会ということもあり、なかなか実情が分かりにくいという現状があります。

つまり中国人による自国の政府批判はただちに検閲に引っかかり、直接的に自身のリスクへと繋がるのです。

政府は国民のあらゆる個人情報を把握・監視・検閲しており、日本人の感覚では中国国民は極端に表現の自由が制限されているように思えます。

こうした理由から外交や軍事といった側面以外からも、中国社会の実態をルポ取材、またはノンフィクションで紹介した本を今まで何冊か読んできました。

ルポ デジタルチャイナ体験記
ルポ 中国「潜入バイト」日記
さいはての中国

これらの本から得た情報を大雑把にまとめると以下のようになります。

  • 中国人は良くも悪くも寛容であり、政府に個人情報を管理・監視されていることをさほど気にしていない。
  • それでも政府に目を付けられるような面倒はなるべく避けつつ、個人の生活を自由に楽しんでる。
  • (特にIT分野における)中国人のビジネス展開は日本人以上に柔軟さと臨機応変に富んでおり、技術革新という側面で中国を追従するのは容易ではない。
  • 社会との調和を重んじる(空気を読む)日本人とは対照的に、中国人は他人の目をあまり気にしない個人主義の傾向がある。
  • 一方で身内(仲間)だと認めた人へ対してはとことん親切であり、日本人なら躊躇するようなお金の貸し借りにも応じることが多い。

    • 一言で表せば、一党独裁の政治体制を敷く国家の中で生活をする中国人たちはしたたかに生活しているといえます。

      しかし状況はつねに変化してゆくものであり、情報をアップデートするために本書を手にとってみました。

      本書はコロナがほぼ収束した2023年に出版されており、中国に詳しいフリージャーナリストの中島恵氏によって執筆されています。

      はじめに注意すべき点として、あくまでも著者の個人的な知人やそこから紹介された中国人へ対して取材する形をとっており、これは大々的なアンケート調査や世論調査を行えるような国柄ではないため仕方のないことですが、統計的な意見ではないという点です。

      また当然ですが、取材対象となった人の経済状況、学歴、職業、地域などによって意見はさまざまであるという点も頭に入れておくべきです。

      インタビュー内容は政治、経済、教育と広範囲に及びますが、全体として先に紹介した中国人へ対する印象が大きく変わることはありませんでした。

      一方で本書によって新しく知ることも多く、その一例を紹介したいと思います。

      例えば中国国内ではマナー意識が高まりつつあり、都会の中で大声でケンカをするような光景は見られなくなったといいます。

      ただし都市部住民と地方出身者ではマナー意識の格差が大きく、都市部住人はマナーの悪い地方出身者と同じ中国人だと思わないでほしいとさえ考えています。

      先に紹介されたように厳しい情報統制が行われている中国社会では、共産党幹部の汚職など都合の悪いニュースは報じられません。

      しかし多くの中国人が日本や欧米のニュースソースへアクセスできる手段を持っており、次のように語っています。
      もし本当に、中国人は自国の都合の悪いことは何も知らない、と信じている日本人がいるとしたら、あまりにもお気楽というか、時代の変化に鈍感だと思います。

      ここ近年の中国の科学技術やAIをはじめとしたIT技術の発展は目覚ましいものがあるは私自身も感じており、中国人たちも自国のサービスや商品に自信を持ちつつあります。

      結局は1人の人間として考えたときに、日本人と中国人にそれほど違いはないのかも知れません。

      本書の最後にインタービューに答えた中国人は次のように答えています。
      中国中の人が覇権主義に賛同し、中国に世界でナンバーワンの国になってほしいなんて考えているわけではありません。
      多くの中国人は自分と家族の生活を守り、ただもっと豊かになることだけを望んでいます。 求めているのは社会の安定と家族の幸せ、それだけなんです。