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本ブログでも何度か紹介している原田ひ香氏の小説です。
主人公は北沢藍33歳。
かつてタワーマンションで夫と2人の子どもの3人で暮らしていましたが、自らの不倫が原因で離婚し、親権も夫側に取られしまい1人暮らしをしている女性です。
もっとも離婚前から夫との仲はうまくいっておらず、義理の父母とも折り合いが悪い状況が続いていました。
そして藍の母である孝子58歳。
彼女は定職にはつかず、あちこちに男を作っては水商売のようなことをして暮らしています。
次に藍の祖母のヤス80歳。
夫を早くに亡くし、年金暮らしをしています。
ちなみに藍の父は物心がつく前に離婚して家を出ており、顔も覚えていません。
また母と祖母に共通するのは、2人とも家事や子育てに関心が薄く、こうした2人を避けるように藍は10年間も実家に寄り付くことがありませんでした。
さらに母と祖母の相性が悪く、喧嘩が元で母が祖母へ対して傷害事件を起こしてしまい、藍は久しぶりに実家へ顔を出すようになります。
(幸い祖母のケガは軽症であった)
2人とも生活に必要な充分な収入がなく、いわゆる貧困層と言われている生活をしていました。
さらに藍も離婚してからの引っ越しなどで貯金を取り崩してしまい、経済的な余裕が無い状態です。
彼女は実家に顔を出すようになってから幼馴染である美代子と再会しますが、彼女も親戚から祖父の介護を押し付けられて、定職に付かず祖父の年金を頼りに暮らしている状態でした。
この美代子との再会がストーリーを思いがけない方向へ展開してゆくことになりますが、ネタバレになるため本ブログでは紹介するのは控えたいと思います。
著者の作品は現代の社会問題を切り取ったものが多く、本作品では貧困問題が大きなテーマになっています。
主人公の藍は1度は手に入れた安定した生活を離婚によって失いますが、もともと実家は裕福ではなく、家庭問題によって祖母から貧困の連鎖が3代続く状況になっています。
そして主人公の幼馴染である美代子は日々の介護に追われて定職に就くことが出来ず、結果的に平均的な生活水準を送ることが難しい状況に陥っています。
貧困問題は単に当事者たちの経済的な困窮だけに留まらず、差別、孤立、そして犯罪といった副次的な問題へと広がっています。
そうした意味で本作品はエンターテイメント小説としての側面と、社会派小説としての側面があるといえます。
ちなみに本作品に限らず、著者の作品には登場人物の収入や資産状況、つまりお金について具体的に言及されていることが多く、ストーリーそのものに生々しい現実感を感じることができます。
